DOGS HOTEL
「201号室・鈴子」
チロの飼い主(チロM)
淡いピンクに塗られた更衣室。
木製のロッカーに着ていた服をすべて仕舞うと、鈴子は深い吐息を漏らした。ついに
来てしまった、憧れのDOGS HOTEL。
数え切れない位、DOGS HOTELを夢想してオナニーした。
私の思いは叶えられるだろうかと、ホテルの坂道を上がりながら何度も立ち止まって
思いを巡らした。小さな坂を上がるのにずいぶん時間が係った。服を脱ぎながらも何
度もこのまま逃げ帰ってしまおうかと思った。ホテルにくる電車の中では期待で張り
裂けそうになったこの胸も、今は不安で小鳥のように振るえている。
ホテルのドアをくぐり、この更衣室に入るまで誰にも出会わず、小さなプレートに従っ
てここまで来た。
更衣室にある鏡に鈴子は姿を映して眺めた。小さな背丈、貧弱な胸、でもちょっと自
慢の細い腰と張りがあって締まったお尻、腹部の翳りは剃ってしまった。きっとメス
犬はみんな綺麗にしておくものだと思ったから。鏡の中で、女のワレメが丸見えになっ
ている。笑われたらどうしよう、そう思うと誰も見ていないにもかかわらず、つるつ
るに剃ってスリットの見える丘を両手で隠した。
鈴子は置いてあった首輪を付けるとフーと何度目かの溜息を洩らした。逃げ出したい
ような震える気持ちが首輪をすることで静まっていく。更衣室に入ってから、もうず
いぶん時間がたっていた。
深呼吸をして鈴子は四つん這いになると、入ってきたときに見つけた部屋の角にある
小さなドアに向かった。入って来たドアの他にドアがあるのはここだけだった。そこ
には、小さな金色のプレートに「DOGS HOTEL ロビー」と書いてあった。
ドアは低く小さく、四つん這いで入るしかない。指先が振るえ、腕に力が入らなくて、
ややもするとつんのめってしまいそうだ。前歯がカチカチを音を立てていた。
ドアをくぐり抜けると、間接照明だけの穏やかな光と重厚な香りが漂う。
広い部屋にはホテルの従業員らしい女性が一人しゃがんで待ち受けていた。女性は鈴
子の顔をだき抱えると静かな落ちついた声で「よしよし、よく来たね。心配しないで
いいから、私に任せなさい。私はあなたの客室係よ。ここはあなたと同じ様なワンちゃ
んがいっぱい泊まりに来るところなの。安心して犬になりなさいね」
客室係の言葉に鈴子は抱きしめられて、「ここ、、ここに来たかったの」
突然、涙がボロボロ溢れて声が詰まった。声を上げて泣き出したくなるのを懸命に堪
え,ヒックヒックと声をしゃくり上げた。
「そう、不安だったのね。ずっと、自分の中のメス犬を押さえてきたのね。女の子は
みんなメス犬の資格があるわ。あなたはちょっとだけ飛んだの、自分に正直に。大丈
夫よ。ここはあなたが思い描いたDOGS HOTELよ、メス犬の扱いには慣れて
いるわ。そして、ここの従業員もみんなね。あなたを可愛い犬に躾て上げるわ、犬の
幸せを教えて上げる」
客室係は鈴子の背中を優しく撫でながら泣き止むのを待つと、首輪にリードを付けて
「四つん這いで歩けるわね。このホテルの中で、あなたは立って歩いてはいけないの。
わかる?」
鈴子はコックリと首を折って答えた。
「わかったら、ワンって答えるの。あなたは犬なんだから。あとで犬の鳴き方も教え
てあげるわ」と言いながら客室係は鈴子のリードを持ち、歩き出した。
客室へ向かう廊下でボーイに出会った。鈴子は狼狽して思わず縮こまり固まってしまっ
た。ボーイは鈴子の横で鈴子に軽く会釈をすると通り過ぎていった。「ほーらね。裸
で四つん這いの女だ!なんて、ビックリする分けないでしょ。それが当たり前なの。
ここはGODS HOTELよ。」
ノブを開けて入ると、そこは女の子の夢のようなお部屋だった。
ピンクを主体にした花柄の壁、可愛い家具達、部屋の中央には白い幾十にも重なるレー
スに囲まれた天蓋のあるフカフカのベット。枕の横にチェックのチェッカーをしてチョ
コンと座るぬいぐるみの可愛い熊さん。
きょろきょろと見回す鈴子のリードを引き、部屋係はベットに腰を下ろすと自分の前
の絨毯を指さし、「ここに来てオスワリしなさい」客室係は立ち上がり鈴子にオスワ
リの姿勢をとらせて、またベットに腰を下ろした。
「ベットは人が寝るところ、犬が寝るところじゃないわね」客室係は鈴子に咬んで含
むように話して聞かせた。
「いい、あなたは子犬、母犬から離されたばかりなの。不安がいっぱいで、しかも寂
しいの。躾を受けるのはこれから。いろいろな犬の厳しい訓練をするのはずっと先の
こと。この部屋の主は見ての通り、女の子ね。名前は、鈴子。甘ったれで、おしゃま
で、ちょっと小なまいき。誕生日にお父様に仔犬をプレゼントされたわ。あなたの事
よ。」鈴子の鼻をつまんだ。
「嬉しくて仕方がないわ。思いっきり可愛がりたいの。でも、躾もきちんとして、お
父様に褒められたいの。わかる」鈴子の顔を覗き込んだ。
鈴子はワンと返事をした。
「そお、わかるの。いい仔ね」鈴子の頭を撫でて、客室係が立ち上がった。
「喉が乾いたでしょ。水を持って来て上げるわ」鈴子を残し、客室係は部屋を出ていっ
た。
鈴子は部屋を見渡した。立って歩くときと視線が違う。自分がひどく小さくて、か弱
いものに思えてきた。客室係の「あなたは仔犬」その言葉が頭の中で渦巻いていた。
緊張が薄らぐに連れて、尿意を感じてきた。リードはベットの柱に結ばれたまま。尿
意さえままならない事を知る。
客室係はなかなか現れなかった。
ドアを開けて入ってきたのは、女の子。アルプスの少女ハイジを連想させるドレス。
少し、いや、もっとずっと上品な感じ。
「まあ、私の可愛い仔犬ちゃん」声を聞いてあの客室係だとわかった。でも、とても
信じられないほど、見事に汚れも知らぬ愛らしい少女ぶりだった。少女は鈴子に駆け
寄りひざまずくと、鈴子をぎゅっと抱きしめ「私の可愛いワンちゃん」と揺さぶった。
揺さぶられて、揺すられて、そして鈴子は仔犬になった。
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