文と絵 ウンターメンシェ

 

 ある晴れた日の午後。その町は小さな人の群でごった返していた。

 町だけでなく近郊の村からも多くの小人が繰り出しているらしい。雑踏がとぎれることなく続く。茄子やキュウリ、トウガラシなどを入れた木箱が積み上げられた露天の青物市場では売り手と買い手の間で値段のやりとりがかわされている。

 道ばたや路地の一角には様々な雑貨を広げた店がある。

 人混みを縫って、家畜がひっきりなしに通る。白い動物が四本足でのたのたと進んでいる。

 動物の見た目は女の身体に似ていた。ただ、人間でいう肘から先の部分が獣のような蹄のついた前足をしていた。それに膝から先も蹄のついた後足をしている。

 進む度に下向きにぶら下がった乳房がブランブランと揺れる。

 そして、むくむくとうごめくハート型の尻は、鞭打たれるために存在しているように見える。そしてその肉球の間にあるものと来たら・・・・

 私も家畜の一人だった。いや、一匹というべきか。

 四つん這いで首にかけられたロープを飼主に曳かれ、のたのたと歩く。動物のように変形してしまった手足では立って歩くことは出来なかった。そしてその四肢で歩くとお尻がくねくねと揺れ、胸の下で乳房がぶらぶらと揺れるのがわかる。

 もちろん家畜だから服は着ていない。

 私は羞恥で伏せがちになる顔を、鞭打たれるたびに上げながら、人混みの中を這い進んだ。

 小人達の背は高く掲げた私のお尻位しかない。私はたまに、すれ違いざまにお尻を平手うちされたりした。

 その度に飼い主が振り返り、後ろに向かって怒鳴る。

 私は情けなさに泣きそうになりながら、蹄と化した手足を動かした。

 

 ここがどこなのか、私にはわからない。

 列車に乗って外国の大陸を横断していた私は、列車の中で奇妙な病気にかかってしまったのだ。

 高熱が出て、手足が腫れ上がり、意識が朦朧となった。車掌に助けを求めたが、車掌は私の症状を見るなり列車を止めて、人気のない荒れ地に私を放り出してしまった。

 とても酷い扱いだったが、今となっては理由がわかる。私はとんでもない病原体に犯されていたのだ。

 熱が引いたあと、私の手足は、蹄のように変化していたのだった。そんな奇妙な病気は聞いたことも見たこともない。

 私は四つん這いで荒れ地をさまよい歩いた。蹄と化した足では立って歩くことが出来なかった。それだけではない、熱で喉がやられたらしく、声が出せなかった。

 そして、小人達に捕らえられたのだった。

 服は全て奪われてしまった。

 私を捕まえた小人は、私の身体を撫で回した。それは愛撫というよりも吟味であった。

 私の裸を見て欲情しているわけではないらしい。

 しかし私は恥ずかしいことに変わりはなかった。

 四つん這いで、喋れない私は人間ではなく動物として扱われるらしい。

 私は売られるためにこうして町へと曳かれてきたのだ。

 

 町の中央では女市が開かれた。

 家畜となった女が競りに立たされたのだ。

 競り台には次々と家畜が立たされる。年齢層は十代後半から二十代後半くらい、顔立ちや体型も様々だったが、みな四つ足だった。

 どうやら若い女しか病原体に犯されないらしい。そしてこの小人の土地に捨てられてしまうのだろう。

 彼女達は用途別に身体に色々と細工をされている。共通しているのは陰唇から垂れ下がった鑑札と、お尻の焼き印である。

 私はまだ鑑札も焼き印も持たない。

 何番目かに競り台に立たされた私は遊牧民に落札された。

 その遊牧民は貧しい身なりで焼けた肌を持っていた。私はある英単語を思い出した。LIVESTOCK=生きている財産=家畜。そう、私は彼の財産なのだ。

 私の落札値は高いのか、低いのか。

 

 遊牧民はチャカラという名前だった。彼は競りの事務所に行って私の代金を払うと、私と、鑑札と、リングを手に入れた。

 鑑札には家畜税の基礎になる家畜番号が刻まれている。

 四つん這いの私の陰部に素早く麻酔が施され、両方の陰唇に穴を開けられて、リングを通された。そして左のリングには鑑札を取り付けられた。

 私の陰唇は無様に引き延ばされてしまった。

 女市の前には様々な形の焼き印を押す出店が並び、鉄の炉から煙を上げている。

 焼き印屋は赤く焼けた鉄の焼き印を持ち上げた。私はそれから逃れようとしたがそれは出来なかった。焼き印屋は私の柔らかい右のお尻に山形を組み合わせたチャカラの所有印を押しつけた。私は激痛と、私の皮膚が燃やされる匂いを感じた。涙で全てがにじんで見えた。

 白い肌をノミで彫ったように、焼き印は私に刻みつけられた。

 更に私は別の店で鼻とクリトリスに穴を開けられ、それぞれリングを通された。私の身体は苦痛でよじれた。それらは切断しない限り永久に外すことが出来ないように溶接された。

 私の身体に取り付けられたリングは四つん這いの私が体を動かす度に、ぶらぶらと無様に揺れ、それが付いている肉を揺すり、刺激する。さらにクリトリスリングには重りがぶら下げられ、私のどんな動きにもぶらぶらとゆれて、苦しみとともにクリトリスを引っ張る。

 鼻輪にも鎖が取り付けられ、私は人通りの多い市場の中を曳かれていった。一歩脚を踏み出す度に揺れ動くクリトリスのウェイトは、私を素直にしていた。

 そして私は一日身体を休めたあと、家畜としての生活を始めた。

 

 遊牧宿営地の朝は早い。

 飼い主のチームは三人で11匹の搾乳家畜を使っている。そのほかにそれぞれが乗るのに使う移動用家畜が三匹。そして私である。

 チームのリーダーは飼い主のチャカラ。あと妻のノコシバと息子のオトラクだ。

 私は他の家畜達が寝場所にしているテントから30メートルほど離れた空き地に鼻輪の鎖を繋がれていた。

 他の家畜女達もそれぞれ四つ足の改造を受けていて、鼻輪の鎖を繋がれている。

 私は外で眠ったのは初めてだったが、寒くはなかった。それに、家畜らしい扱いを受けることに今までにない不思議な感覚を覚えていた。

 やがてテントの方で動きがあって、チャカラとオトラクが移動用家畜の腰にまたがってやってきた。

 移動用家畜は、四つ足だが、四肢は長く、私達の足が短く変形しているのに比べて手足が長い。

 柔らかな唇の間に頑丈な轡を噛まされ、腰のくびれに合わせた鞍を背中に乗せ、形の良いヒップを鞭打たれるために突き出している。

 オトラクが家畜から降りて次々と私達の髪にブラシをかけ、束ねてから鼻輪の鎖を外した。

 「ホウ、ホウ、ホウ」

 チャカラがかけ声をかけると、十一匹の家畜女の群は立ち上がって、腰をくねらせながら一方向に四つん這いで歩き始めた。

 私もオトラクに尻を鞭打たれ、のたのたと進み始める。そして害虫のようなクリトリスの重りは一歩毎に私を悩ませ続けた。

 一番後ろから見ると、焼き印を押されたいくつもの女の白いヒップが、中心につけられた鑑札をきらめかせながらくねっていた。

 女の群は山裾沿いに進んで回り込み、湖を足元に見る放牧地をめざす。

 チャカラとオトラクはときどきかけ声をかけながら、ゆっくりと女達の群の後ろからついてゆく。

 家畜女の主食は草だった。

 その草の群落に突入した女達の群は散開して採食にかかる。私もしかたなく地面から伸びた草をかじってみる。

 食べられないことはない、という程度の味だった。

 女達が食べている間、チャカラとオトラクは手持ちぶさたである。ただ、時間が来るまで食べない女を鞭打っては、充分食べるようにさせるのだ。

 時間が来ると女達の群は再び追われて、眼下の湖に降りてゆく。そこで十分に水を飲ませてから、宿営地へと戻る。

 そこで二時間ほど休息をとる。

 次に、一匹ずつ家畜女の鼻輪に鎖を通し、搾乳場所に連れてこさせる。

 女房のノコシバが家畜女の下に金属容器を置いて、脇から手を差し入れ、ぶら下がる張り切った乳房をつかみ、ピンク色の乳首を指先でしごく。

 すると、白いミルクの筋が乳首の先から飛び出して金属の底を叩く。

 女の乳首だから、そんなに強い刺激には耐えられない。だから、ソフトに絞らなければならない。

 乳首の刺激で女が快感を感じて、進んで乳搾りに協力する程度がよい。

 張り切った乳房がソフトさを取り戻し、たぷたぷと揺れるまでにだいたい2リットルほどミルクが絞れる。

 私の乳房はミルクを出さないので、繋がれたままの私は女達の搾乳風景を眺めていた。

 哀れな光景だった。いずれも抜群のプロポーションと華やいだ容貌の女性達だ。この異世界に飛ばされる前は、男性と互角に働いていた者もいるだろう、知的な仕事をしていた者も、美貌を愛された者もいるだろう。しかし今は全裸で四つん這いにされ、ミルクを絞られるためだけに使われている。

 しかし、その思いは私に不思議な甘い旋律を感じさせる。

 腰の辺りが熱い。搾乳される女達もいずれも息を荒くして、ヒップの中心をダラダラと濡らしていた。

 全ての搾乳が終わると、正午を過ぎている。

 午後は再び同じコースを回って、帰ってきてから再度搾乳する。

 搾った乳はチーズやヨーグルトといった乳製品にして、保存する。そしてある程度決まった量になると町へと持っていって売るのだ。

 夕方になると、私達は身体と頭を洗われる。

 そして一日が終わる。

 

 私のアパートはどうなっているのだろう。予定ではもう日本に帰っている頃なのだ。家賃だけがかさんでいくに違いない。電気も水道もガスも。

 定期はもう切れていると思う。

 みんな私が帰ってこないのに気づくだろうか。

 気づいても、ここまで助けに来てくれるだろうか。仮に助けに来られても、家畜になった身体を晒すのは気が引ける。

 病院に行ったらこの手足が元に戻るのだろうか。

 

 私の胸は、草を食べ始めてしばらくするとパンパンに張りつめ、あふれるようにミルクがではじめた。

 乳房をいじられるのを屈辱的に思っていた私も、胸が張ってくると、その痛みで乳搾りの時間を待ち望むようになっていた。

 ノコシバが私にはわからない言葉でつぶやきながら、私の胸をいじる。

 張りつめた胸を撫で回し、頭ほどにもなってしまった乳房をグイと持ち上げて重さを確かめ、しきりに上下させる。

 私は地に落ちた自分の立場を思い哀しくなるが、ミルクの滴りを解消してくれるのはノコシバだけなのだ。

 ノコシバは一旦立ち上がり、片手鍋を持って戻ってきた。

 持ってきた鍋を私の上体の下に差し入れる。そして、乳首を指で少し転がすようにして乳首を立たせた。

 揉み解すように体勢を整えてから乳房を掴み、ミルクを搾り始める。

 ミルクの白い筋は何本かが合流するように、勢い良く鍋底に叩きつける。

 思ったようにミルクが搾れたのでノコシバは上機嫌である。

 まだ両方の乳房から搾り切ったわけではないが、小ぶり手鍋にはほぼ一杯のミルクが溜まっていた。

 ノコシバは鍋を持ち上げると、その量の多さに感心したように白い液面を眺めていた。

 何かをつぶやいて、侮蔑の眼を私に向け、笑う。

 その表情が私を屈辱の中に突き落とすのだが、こんな身体にされてしまっている以上仕方がない。

 ミルクを絞り終わった私の胸の柔らかさを確かめるようにノコシバはいつまでも私の胸を揉んでいた。

 

 日が経つにつれて、私もすっかり一人前の搾乳家畜となっていた。

 身体の下で揺れるバストは100センチを越え、一度に二リットルから三リットルものミルクを出すようになった。

 村で市が立つ日には、チャカラは必ず出かける。私達が出したミルクで作ったチーズを売るためだ。買い手は地元の卸売業者だ。

 だいたい一週間毎に市が開かれる。女のミルクから作ったチーズは、上質品として珍重されるらしい。

 市への往復は一日仕事となる。朝早く起きて、移動用家畜の背に革袋を積み、出かける。

 移動用家畜達は一列に並び、鼻輪とクリトリスリングを繋がれて、出かけていく。

 たまに、移動用家畜の後に搾乳家畜が繋がれることもある。

 その家畜女は帰ってこなかった。女市で売られたのだろう。

 移動用家畜がいないので、放牧は出来ない。その日は必然的に休みとなった。

  

 季節は巡り、放牧地の草もなくなりつつある。

 チャカラは次の宿営地への移動を決めた。

 次の宿営地への出発は、やはり朝早い。

 チャカラ達はテントや家財道具を畳み、それを女の髪で編んだロープで私達の背に分散してくくりつけた。

 私達は全員、クリトリスのリングに逃亡防止用の鈴を取り付けられた。そして縦一列に並ばされると、張り型の付いたロープで繋がれる。張り型を前の女のお尻の穴に入れ、そこから伸びるロープを鼻輪に繋がれるのだ。こうすると、逃げようとしても前の女に気づかれてしまう。

 もっとも私には逃げるつもりはなかった。こんな身体でどこへいけるというのだろう。

 かけ声とともに女の隊列はのたのたと歩き始めた。

 竈の残り火の白い煙がまっすぐとたちのぼり、青い空に白い線を描いた。

 女の列の先頭に、移動用家畜に乗ったチャカラがいて、一番後ろにノコシバがいる。オトラクは隊列の片方にいる。三人とも杖を持っていて、遅れる女がいると遠慮無しに尻をぶつ。

 小さな谷を渡り、小高い丘の斜面を一気にかけ登る。

 隊列はクリトリスにぶら下げた鈴の音を響かせながら進む。

 鈴が鳴る度にクリトリスにびりびりと響いた。慣れると気持ちいいかもしれない。

 私の鼻輪から伸びたロープが前の女の白く丸いお尻の切れ込みの間に消えている。お尻はむくむくとくねくねと、複雑な動きを見せている。張り型を呑み込んだ肛門が少しまくれて中のピンクを見せている。その下の陰唇は長い間鑑札をぶら下げているせいで不揃いにはみ出し、その間から透明な物を滴らせている。

 私は自分の股間を眺めたことはあまりなかったが、私のもきっと彼女のようになっていることだろう。

 石ころだらけの荒れ地を通り過ぎると、やがて小さな村が見えた。

 四つん這いの女の隊列はその村へ向かってのたのたと進んでいく。心なしか隊列の速度が鈍る。私もそうだった。随分長い間、遊牧民の三人以外にこの無様な身体を見られてはいなかったのだ。

 尻を杖でぶたれ私達は村に入った。

 村の小さな通りを、クリトリスの鈴を鳴らしながら四つん這いで歩く。村人が立ち止まって眺めている。

 私は久しぶりに羞恥を感じた。

 股間の濡れが増したような気がした。

 村の真ん中に広場があり、湧き水を囲った池があった。

 私達は鼻輪のロープをほどかれた。お尻の張り型も抜かれた。

 私達は何匹かずつ池の水を飲んだ。

 休憩がすむと、搾乳される。

 草を食べていないので、量は少ない。残り乳といったところである。村人が寄ってきて、見物される。

 ミルクは希望者に売られる。貴重な現金収入といったところだ。

 村人達の視線が、お尻を見つめているのに気づく。急に恥ずかしさが増す。草原ではなく、家々の間で見る家畜女は、やはり異様な存在だった。

 四つん這いの裸の女の集団なのだから。

 手足だけでなく鼻輪の存在が、いっそう動物らしさを増している。どんな美貌の持ち主も鼻輪をされていては美貌を誇ることは出来ないだろう。

 そして全裸ということは全員を平等にしている。恥ずかしい部分を余すことなく人目に晒している。

 最後に人間の服を着ていたのはどのくらい前だったのか、思い出せない。人間だったのかも疑わしいとさえ思っている。

 

 道は畑の中を伸びていた。所々に畑があり、作物が育っている。

 平坦な道がしばらく続いた。

 白い家畜の隊列は相変わらず尻を揺すりながら進んでゆく。

 背中の荷物にくくりつけたバケツや他の金物がどこかに当たって音を出す。クリトリスも鈴音を奏でる。

 旅の途中、常に顔の前にあった女性器は、今ではすっかりクリトリスを引き延ばされ、後ろからでも体に合わせて揺れているのがわかる程になっていた。

 緩やかな尾根を登り切ると村があった。

 家々は貧しい泥屋根で葺かれていた。

 どこからか子供達が出てきて、私達のあとから付いてくる。

 私達は一軒の家の前で泊まった。家から小人が出てきた。

 チャカラとノコシバが家畜の背から降りて交渉を始めた。

 小人は私達一匹一匹の髪を触り、何かをいうとチャカラとノコシバが反論する。

 やがて交渉がまとまったらしい。私達はその場で一匹ずつ髪の毛を丸坊主に刈られた。私達の髪はかなりの長さに伸びていた。

 刈り取った髪の毛は色別に分けられた。

 丸坊主にされた私は、悲しみよりも涼しさを感じた。自分の身体に今まで加えられた仕打ちを思えば丸坊主くらいなんということはない。

 その辺の神経が麻痺しつつある。

 

 隊列は、山や、谷を越えて進む。

 四つん這いの白い家畜たちは乳房と尻を揺すりながら、のたのたと進む。

 旅の間、たまに食べられる草の生えている土地があると、そこに泊まって草をはむ。

 次の朝には乳房が膨らみ、ミルクを出す。

 私達は女の身体を持ちながら、女であることを否定され、女の部分で飼い主に奉仕する便利な家畜だった。

 家畜として扱われていることを考えると、私達の扱いは悪い方ではないのかもしれない。

 毎日きちんと餌を与えられ、身体も毎日拭いてもらっている。

 私達はその見返りに乳を出した。

お尻を鞭打たれたり、焼き印を押されたり、身体にリングを通されているのは人間が牛や馬に対してしていることより、酷いということはない。

 最近、人間だった頃の記憶が無くなりつつある。

 この生活が永遠なのだ。


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