名犬ミズキ

 

斐芝嘉和


  壱


 
 藤城の屋敷は、鬱蒼と茂る森の中にあった。

 梢の上に鮮やかな緑青の甍を覗かせる尖塔が五つ、石組みの壁には厳めしい鎧戸が並び、小さな野球場くらいの大きさがあるため、屋敷と言うより城と言ったほうがしっくりくる。苔生し、蔦に包まれ、実際よりもずっと歳経ているように見えた。

 藤城美雪は、この屋敷が嫌いだった。

 両親を交通事故で失い、伯父の藤城玄蕃に引き取られて初めてここへ訪れた時から、イヤな気分がした。暗く、重苦しく、押し潰されるような??その思いは、三年経ったいまでも変わらない。いや、むしろ年ごとに、胸を塞がれるような思いは募っている。

(ああ……また帰ってきてしまった??)

 黒塗りのリムジンに乗って学校から帰るたび、胸がズキリと痛む。槍を並べたような柵門が開かれ、広い庭を抜けて車回しに近づくにつれ、逃げ出してしまいたい衝動が込み上げてくる。

 しかし??。

 石段の下に車が横付けされると、美雪は鞄を抱え、暗い顔で降りる。砂利を蹴ってリムジンが車庫へ帰るのを見送り、重い足取りで玄関へ向かう。物静かなメイドが扉を開け、人形のような表情で頭を下げる横を通り過ぎ、階段を登って養父の待つ書斎へ??。

 彼女には、美鈴という妹がいた。

 生まれつき身体が弱く、いつもベッドに伏せっているような少女だ。そんな妹を残し、ひとりだけ逃げ出すことなどできるわけがなかった。

「お養父様、美雪です??ただいま帰りました」

 薄暗い書斎に入り、いつもの挨拶をする。養父は唸るような声を上げただけで、机に落とした視線を上げようともしない。

 不必要に広い部屋に、ペンが紙を擦る幽かな音だけが響く。美雪は暗い視線を上げ、書斎の中をぼんやりと見回した。

 冬になれば実際に火の灯される、大きな暖炉がある。黒檀でできた、立派な棚があった。石組みの壁には青と緑が鮮やかな、幾何学模様のタペストリー。部屋の隅には大小さまざまの酒瓶が収められた小さな棚と、ひとり掛けのテーブルに使い込まれたロッキングチェア。青磁の一輪挿しには、森の中で摘んできたのか、白く可憐な花が生けられていた。

「よし??始めろ」

 低い声に、ハッと我に返る。大きなフランス窓を背に、養父の玄蕃が顔を上げていた。紅い夕暮れを背景にしているため、顔は影になってよく見えない。血のように紅い空を背負い、やや前屈みになって美雪を見つめる大きな影は、魔王かなにかのようだ。

「……」

 美雪は怯える心を叱咤して、鞄を開け、中から小さな革ベルトを取りだした。大型犬用の首輪である。長い黒髪を払い、青白いうなじに巻きつけた。金具を留め、自分で外せないよう小さな南京錠を掛ける。カチリ、と響いた金属音に、美雪の心にも鍵が掛かった。

 鞄を床に降ろし、制服のスカートを降ろす。薄闇の中にスラリとした脚が現れた。純白の靴下に包まれた足首は折れそうに細く、脛は若鮎のように優美な曲線を描く。形よい膝小僧、ムッチリとした脂肉の柔らかさを湛えた太腿。美雪はブレザーの裾下に手を差し入れ、秘部を覆う薄布に指を掛けた。羞恥に火照る頬を流れ落ちた艶やかな黒髪の中に隠しつつ、白いパンティを脚から抜く。

 下半身だけ裸になった少女は、床に膝を着き、再び鞄を開けた。中から房付きの、マッシュルームのような器具を取り出す。パールピンクのシリコンゴムでできたアナルプラグである。太さは笠の部分の直径が3.5センチはあるだろうか。美雪は朱唇を開けてプラグをしゃぶり、唾液をたっぷりと塗したあと、床に蹲るようにして白く輝く尻を持ち上げ、大きく開いた腿の内側から手を伸ばして自らの肛門に押し当てた。

「ん……」

 僅かに呻いただけで、その恥ずかしい器具はすんなりと少女の尻の中へ潜り込む。

(ああ??私は、今日もまた……)

 排泄器官を塞ぐ硬い異物の感触に、美雪の目にはじわりと涙が浮いてくる。なぜだか息苦しく、勝手に口が開いてしまう。呼吸が乱れ、羞恥と屈辱に肌が火照る。それでも、やめることはできない。

 ポケットからイチゴを模した髪留めを二つ取り出し、長い黒髪を頭の左右に振り分け、留めて、犬の耳のように垂らす。紅い絨毯の上にアヒル座りをし、僅かに開いた膝の間に手を着いて、桜色に染まった顔を上げた。

「……わん!」

 準備完了の意を込めて、一声。

 ずきん、と胸が痛む。

 鼓動が高まり、身体の芯が熱くなってきた。

(どうして、私は……こんな……)

 屈辱に眩暈を覚える。

 羞恥に気が遠くなる。

 それなのに??。

「いい顔だ、美雪。さあ、こっちへ来い。可愛がってやるぞ」

 低い声とともに手招かれると、美雪は濡れた瞳に蕩けるような笑みを浮かべ、尻を持ち上げて這い始めた。

 掌に毛足の長い絨毯を踏み、魔王のような養父へヨタヨタと這い寄っていく。肛門から生えた、髪と同じ色の長い尻尾が、ゆさゆさと左右に揺れて白い腿の内側を撫でる。

(どうして、こんなことが??私、どうして??)

 一歩ごとに頬が弛み、一歩ごとに涙の味が変わる。

「ようし、いい仔だ美雪」

 机を回り、玄蕃の足元へ着いた時には、少女の顔には陶酔にも似た輝きが浮いていた。大きな手で頭を撫でられると、思わず「くぅん」と仔犬のような声が漏れる。

「おすわり」

 命令に、ブレザーの肩をピクンと震わせながら、美雪は素早く姿勢を変えた。アヒル座りした尻の下で房の芯が絨毯に圧され、アナルプラグが直腸を抉るように動く。

「はぅんっ」

 痛みのために上擦った声を上げながらも、少女の頬には悦びの表情があった。

 肉悦を知ってしまった身体は、男を求めて疼いている。逞しい手に触れられることを待ちわび、ペニスを受け入れるために蜜壺を潤ませて、焦らされれば焦らされるほど熱く蕩けてしまう。

(ああ??お養父様……)

 美雪は従順な犬らしい顔を玄蕃に向け、次の命令を待った。

        *  *  *

 湯を浴びた美雪は、ゆったりしたパジャマの上にガウンを羽織り、洗い髪が乾かぬうちに三階へ登って妹の部屋のドアをノックした。中から佳弱い声が聞こえてくる。

「お帰りなさい、お姉ちゃん」

「ただいま。いい子にしてた、美鈴?」

 病弱な少女は、ベッドの上に腰掛けて、お気に入りのぬいぐるみを抱え、弱々しい笑みを浮かべて姉を迎えた。長く艶やかな髪が、桃色のパジャマに包まれた細い肩を覆っている。年齢の割に小さな身体が、痛々しくもあり、愛らしくもあった。

 美鈴の病気は進行性のものではない。ただ、生まれつき身体が弱く、床に伏せていることが多かった。三年前までは、休み休みではあるがどうにか学校に通い、美鈴なりに努力していたのだが、両親を亡くしたことがショックだったのか、美雪とともにこの屋敷に来てからは、ほとんど部屋から出ない生活を送っている。

(私が守らなければ??)

 線の細い妹を見るたび、美雪の胸のうちでは決意が新たになる。

 養父の玄蕃は、いやらしい男だった。姪を引き取ったその日に、酒を呑ませて犯したような男だ。まだ子供だった美雪は行為の意味すらよく分からず、痛さに泣き、男の身体に怯えたものの、美鈴のことを思い出して耐えた。犬のように扱われる屈辱もこらえ、淫らに変わってしまった己に羞恥を覚えながらも逃げ出さずに留まっているのは、美鈴を守るためである。

「私をどんな風に扱っても構いません」

 処女を奪われた三日後、玄蕃の寝室へ自ら足を運んだ美雪は、まだ幼さを残す顔に意思の強さを示しながら、強張った声で宣言した。

「その代わり、美鈴には決して、手を出さないでください」

 玄蕃は少女の決意に歪んだ悦びを見せ、以来、姉妹のそれぞれに別の顔を使い分けてきた。妹の美鈴には雄々しく心優しい養父の顔を、姉の美雪にはいやらしく変態的な男の顔を??その二重生活は、この三年間変わらず続けられていた。

 学校から帰り、養父に犯されたあと、熱い湯を浴びて身体の汚れを洗い落とし、妹の寝室を覗く??三年間休まずに続けられている日課であった。美鈴の無邪気な顔を見るたび、美雪の心に澱のように蓄積していくイヤな気分は少しだけ軽減される。

(美鈴はなにも知らない??美鈴はまだ、綺麗なままだ??)

 いつの間にかそのことだけが、美雪のすべてになっていた。

「わがままなんか言って、お養父様を困らせたりしていないでしょうね? 勉強もちゃんとしてる?」

「わがままなんて言わないよ。勉強も、ちゃんとしてるもん」

 ぷん、と頬を膨らませる妹を頬笑ましく見つめながらベッドの端に腰掛けた美雪は、枕元に見慣れないぬいぐるみがあることに気づいた。姉の視線を見て、美鈴が無邪気な笑みを浮かべる。

「お養父様がね、誕生日プレゼントだって買ってくれたの。可愛いでしょう?」

「そ、そうね??」

 左右の目の色が違う、シベリアンハスキーのぬいぐるみであった。痩せて小さい美鈴の胴と同じくらいの大きさがある。デフォルメされているものの、精悍な顔立ちはよく再現されていて、少し怖い。

(ううん、そうじゃなくって……)

 美雪の胸に広がった不安は、そんな理由からのものではない。姉の心痛を知らぬげに、美鈴が嬉しそうに言う。

「お養父様は犬が好きなんだって。本物を飼いたいのだけれど、忙しいからお散歩もできないし、ぬいぐるみで我慢するって。時々ベンに会いに来てもいいかって??ああ、この子に名前着けたの。ベンって……どうしたの、お姉ちゃん」

「え? ううん、なんでもないの。ベンって言うの? いいわね」

 笑顔を取り繕う美雪だが、不安を隠し切れていなかった。

(お養父様、貴男というヒトは……)

 怒りさえ覚える。

 病弱な妹は、この間の誕生日で三年前の美雪と同じ歳になった。病がちのため成長が遅れているのか、小柄で線は細く、外見から実際の年齢は推測できないが、計算上は玄蕃のいう「旬」である。加虐嗜好の強い養父が食指を動かしても、不思議はない。

(ぬいぐるみに会いにくるなんて……なんて卑劣な……)

 くだらない理由をつけて、美鈴に近づこうとしている??伯父のいやらしい考えが、手に取るように分かる。

(非道い、あんまりだわ??私にあんなことをさせておいて??)

 激情が溢れそうになった。知らず知らず拳を握り締め、唇を噛む。

 怖い顔をして黙り込んだ姉の顔を、美鈴は心配そうな顔で覗き込んだ。

「どうしたの、お姉ちゃん? どこか痛いの?」

「ううん、そんなことない??ちょっと今日は疲れてるの、ごめんね」

 ぎこちない笑みを浮かべて立ち上がる美雪。不安げにしている妹の髪を撫でてやり、剥きたてのゆで卵のような額にチョンとキスをする。

「お休み、美鈴。お薬はちゃんと飲むのよ」

「うん……お休みなさい、お姉ちゃん」

 掠れた声に微笑みを残し、美雪は部屋を出た。

        *  *  *

「どうした? 今日はもういいんだぞ」

 寝室に顔を出すと、裸になったメイドを弄んでいた玄蕃が怪訝そうに眉を吊り上げた。美雪はツカツカと養父の前まで行き、怒りに震える声で言う。

「妹には手を出さないと、約束したじゃないですか!」

「おかしなことを。私がなにかしたと、美鈴が言ったのか?」

 メイドを脇に下がらせた男は、両腕を広げて戯けた表情を見せた。美雪はギリリ、と奥歯を噛み締め、

「まだ、していないだけでしょう……あのぬいぐるみはなんです!? あんなもので、美鈴に近づこうだなんて??」

「おすわり」

 少女の言葉を、低い声で遮る玄蕃。カッと紅くなる美雪に、唇の端を歪めて見せる。

「私は犬が好きでな。前から飼いたいと思っていたんだが、世話が大変だから、美鈴にぬいぐるみを買い与え、毎日会いに行こうかと思っていた??しかし、世話の掛からぬ犬がいれば、話は別だな」

「……!」

 ギクリ、と美雪の顔が強張った。玄蕃の本当の意図を、ようやく理解したのだ。

「おすわり」

 二度目の命令。

 少女は屈辱に唇を噛みながら、おずおずと床に跪いた。俯いた頭の上に、養父の大きな手が置かれる。

「お前は犬か?」

「わ、わん……」

「そうか、そうだったな。美雪はいやらしい牝犬だったな」

「わん……」

「美鈴のぬいぐるみに会いに行く必要はないか」

「わん、わんわん!」

 屈辱に涙しつつ、健気に犬の真似をする美雪。湿り気を残した黒髪を指先で弄びながら、玄蕃は意地悪く微笑んで言う。

「犬というのは、賢い生き物だ。主人の命令に愚直に従うだけでなく、主人の意図を察して、命令されずとも動く。お前にそれができるか?」

「わん??きゃんっ!」

 頬を目一杯叩かれ、哀れな少女は悲鳴を上げながら横向きに倒れた。

「嘘を吐くな。美鈴に犬のぬいぐるみを送っただけでありもしないことを邪推するようなバカが、犬になれるか」

「な、なります! なりますから……きゃんっ!」

 蹴られた脛を抱えて、床の上を転げ回る美雪。その間に玄蕃はメイドに命じ、犬鞭を持ってこさせた。しなやかな鞭先でヒュンヒュンと風を切りながら、

「犬が言葉を喋るか? お前は本当に、どうしようもないバカだな!」

 啜り泣く少女を罵倒する。

「う、うう……」

「そら、誰が寝ていいと言った? おすわりだ」

 低い声で繰り返される命令に、美雪はしゃくり上げながら従った。悔しく、辛かったが、美鈴を守るためには仕方がない。あの病弱な妹に、養父の暗い面を知られてはならない。自分が盾となり、男の毒牙から守らなければ??その一心で、犬の真似をする。

 玄蕃は再び膝の間に来た少女の頭に手を置いて、鞭先で長い黒髪を弄びながら、

「三年間、お前を犬として躾てはきたが、正直言って呆れている。お前は気持ちいいことばかり一生懸命やって、ほかのことは少しも学ぼうとしない」

「わ、わぅん……」

「私はお前のオナニー道具じゃないんだぞ。分かってるのか?」

「わん……わんわん……」

 もっと犬らしくなる気はあるんだな、と問われ、美雪はカクカクと頷いた。玄蕃は少女の背を軽く鞭で叩き、

「ならば毎朝、お前を散歩してやる。首輪に鎖をつけて、屋敷の回りを一周してやる。明日の朝六時、ここへ来い。裸になって尻尾を着けて、犬のように這って、な」

「わ、わん!」

「小便は脚を上げてするんだぞ。巧くできなかったら、お仕置きだ??いや、それとも美鈴を躾ることにするか。あの娘のほうがお前より賢そうだからな」

 縋るような目をする美雪。言葉を封じられているため、もどかしい思いが募る。

「部屋に帰って、小便の練習をしておけ。明日六時だ。忘れるなよ」

 そう言って、玄蕃は美雪を追い出した。

 

      二

 

 初夏の朝、森は霧に包まれている。湿った空気は心地よい程度に冷たくて、爽やかな若葉の香りをたっぷりと含んでいた。

 朝露に濡れ光る芝を、美雪は暗い顔で踏みしめていた。尖った葉の先が掌にチクチクする。微風が白く輝く大きな尻を撫でると、身体の芯まで寒さが染み込んでくるようだ。

 霧に濡れる新緑を背景に、裸の美少女が四つん這いで歩いている様子は、幻想的な光景であった。頭の左右で結んだ黒髪が揺れ、毛先が芝生を掃いている。膝を着かないようにしているために白い尻は高く持ち上げられ、一歩ごとに大きく揺れた。肛門から生えた艶やかな黒い尻尾が、さやさやと幽かな音を立てて柔らかな太腿の内側を撫でる。

 首輪を繋ぐ鎖の端は、養父の左手が握っていた。犬鞭を右手に提げた玄蕃は、ムッチリと脂肉の詰まった少女の尻がふらふらと左右に揺れながら這い行く様子を、薄笑いを浮かべて見つめている。丸い尻には紅い蚯蚓腫れが三本、斜めに走っていた。巧く犬小便ができなかった場合のお仕置きの跡である。

 太い立木の傍へ着いた。美雪は片脚を上げ、頬を羞恥に染めながら、

「う、ん……」

 と唸る。

 しばらく待ったが、小便は出てこなかった。

「どうした、出ないのか?」

「わ、わん……」

「ったく、お前は犬だろうが。なにを恥ずかしがってるんだ?」

 罵られても、出ないものは出ない。

 お仕置きの鞭を尻に受け、美雪は再び這い始めた。

(うう……どうしてこんな……)

 ピリピリと痛む鞭の跡を意識しながら、美雪は俯けた顔の中で唇を噛む。

 くっきりと紅い蚯蚓腫れの割に、痛さは大したことはない。鞭を受けた直後は突き刺さるように痛むが、すぐにジンジンとした痺れに変わり、やがて痒みを伴った熱さになってから、次第に薄れ、消えていく。

 問題は、鞭打たれる理由である。

 犬のように脚を上げて小便ができないからといって、なぜ鞭打たれなければならないのか。理不尽なお仕置きには腹が立ち、悔しさが募る。

 しかし、美雪には拒むことができない。

 すべては病弱な妹を伯父の毒牙から守るため。

 まだ熟し切っていない少女の身体を投げ出して、屈辱に耐え、羞恥を忍び、理不尽な要求に応えていかなければならない。

 再び立木が来た。

 美雪はまた、片脚を上げる。

 ??出ない。

 便意がないわけではない。

 冷たい朝の空気に身体が冷えて、股間には熱い疼きがあった。尻を振って這っている時には、気を抜くと漏らしてしまいそうなほどだ。

(うう……出ちゃう……)

 尻尾が柔らかな内腿を撫でるたび、冷たく重い尿意が高まり、美雪の頬は苦悶に蒼褪め、歪む。寄せられた眉根と喘ぐ唇に、少女の感じている辛さが浮いていた。

 しかし、いざしようとすると、どうしても出せない。

 不自然で不安定な姿勢のため、股間の筋肉が緊張し、尿道が閉じてしまうらしい。羞恥もある。トイレでもない場所で排尿することには強い抵抗を感じる。

(こんな場所で……できるわけ、ないじゃない……)

 しかし、しなければならない。

 美鈴を、病弱な妹を守るためには、恥を忍び、屈辱に耐えて犬の真似をしなければならない。美雪は使命感と尿意、強い羞恥の三つに挟まれ、血の気を失った頬を涙に濡らしながら、立木に向けて脚を上げるのである。

「うう……」

 やはり、どうしても出ない。腹の痛みと巧くできない悔しさに唇を噛みながら、鞭を受けるために尻を持ち上げる美雪。

 ピシリッ!

 熱い衝撃が尻肉を揺らす。

 うっ、と痛みをこらえた少女は、次の瞬間真っ赤になって、

「だ、ダメ……いやぁっ!」

 悲鳴を上げた。

 じょぉぉおおお??っ!

 芝に着いた膝の間に、黄色い液体が迸った。生臭い湯気を立てながら、地面に跳ね、脚の内側を濡らす。

 しばらく前から限界に達していた膀胱が、尻を打たれた衝撃で緊縮し、渋る尿道孔を押し分けて小便を溢れさせたのだ。我慢に我慢を重ねていたため、尿は色濃く、匂いが強い。

「ひぃぃ……や、やだぁ??っ!」

 裸に剥かれて鎖に繋がれ、犬のように這いながら庭を連れ歩かれ、美雪の羞恥心は臨界点の傍にあった。脚を上げるたびに屈辱が募り、尻を鞭打たれるたびに情けなさが増幅していた。そのうえ、

(こ、こんな場所で……こんな格好で……)

 意に添わぬ排泄をしてしまい、理性が軋む。

「ああ、ダメ、見ちゃイヤ、イヤイヤイヤぁ……っ!」

 背後に立った男の視線が怖く、かといって自ら噴出した汚れに身を浸すことがイヤで、美雪は尻を高く持ち上げたままジョロジョロと激しく排尿を続けた。

「??ふん。ダメな奴だ」

 ようやく排泄が止まると、玄蕃は苦笑いのような表情を浮かべて吐き捨てた。鎖の端を立木の幹に巻きつけてから、蒼くなってガタガタ震えている美雪の腕を鞭打つ。

「きゃんっ!」

「今日一日、そこで反省していろ」

「え……そ、そんな……」

 餌や蚊取り線香はメイドに持ってこさせる、と言い残し、立ち去りかけて、ふと思い出したように振り返る玄蕃。

「そう言えばここは、美鈴の部屋から見えるんじゃないのか?」

「え……!?」

 美雪は泣き濡れた顔をハッと上げ、霧の中にそそり立つ城のような屋敷を見上げた。確かにこの場所は、美鈴の部屋の窓から近い。真正面ではないものの、窓辺に立てば見えてしまうかも知れない??。

「お、お養父様……これは、あんまりです……どうか、別の場所に……」

「ふん。バカ犬にはいい薬だ。美鈴に知られたくなかったら、茂みの中に隠れていろ。学校へは行かなくていいから、ちゃんと練習をしておけよ。明日もまたできないようだったら、美鈴を調教することにする」

 玄蕃は美雪の哀願を無視し、愉しそうに笑みながら屋敷へ戻って行った。

        *  *  *

 夜になり、ようやく赦されて屋敷の中に戻された美雪は、疲れた身体を引きずるようにしていつものように妹の部屋に顔を出した。すると美鈴は、ベンと名付けた犬のぬいぐるみを大事そうに抱え、姉の顔を心配そうに覗き込んで開口一番問う。

「お姉ちゃん、今朝お庭で泣いてなかった?」

 思わずドキリとした。

 顔が熱くなるのを感じる。

「う、ううん??どうしてそんなことを訊くの?」

 ぎこちない笑みを浮かべて訊き返すと、美鈴は不思議そうな表情で首を捻る。

「今朝ね、お姉ちゃんの叫び声で目が覚めたの。見ちゃダメ、とか、イヤイヤ、とか、そんな風に聞こえたんだけど??夢だったのかな?」

「そ、そうよ。だって私、朝ってなかなか起きられなくて、いつも遅刻しそうなのよ」

 苦しい言い訳だったが、美鈴は納得したようだ。お姉ちゃんって朝弱かったんだ、と妙に感心したように言いながら、不意に笑顔になって話題を変える。

「そうそう、今日讃岐さんがね、お庭で犬を見つけたんだって」

「え……っ!」

 讃岐というのはメイド頭をしている若い女の名前である。庭に繋がれた美雪に、食事やら蚊取り線香やらを運んでくれたメイドだ。有名大学を出た才女でもあるから、美鈴の家庭教師のようなこともしている。物静かな美人だが、玄蕃の忠実な部下でもあり、美雪はあまり好きではなかった。

 その、いやらしい養父の部下が、妹になにを吹き込んだのか??不安に顔を強張らせた美雪に、美鈴はあくまでもにこやかに続ける。

「なんかね、頭の悪そうな雑種犬で、汚らしいからお屋敷には上げられないんだけど、可哀想だからって餌を持っていったんだって。そしたらその子、もう嬉しそうに涙を流してパクパク食べたんだって。しかも聞いてよ、その犬ったら手を使うのよ。こうして人間みたいに??」

 讃岐がしたであろう身振りを、美鈴はおかしそうに再現してみせる。それは元々、美雪がしてしまったことだ。餌鉢の中のドッグフードを掴み、口に運んで食べる??犬扱いされることが悔しくて、涙が溢れた記憶が蘇る。

(美鈴に教えるなんて……非道い……)

 メイド頭の澄ました顔を思い浮かべ、歯噛みする美雪。しかし妹はニコニコと笑いながら、先を続ける。

「でねでね、その犬って変なのよ。牝なのに、牡みたいに脚を上げてオシッコするの。巧くできなくて、脚をビチャビチャに濡らしてるんだけど、どうしても脚を上げてオシッコしたいみたいで、何度も何度もするんだって??どうしたの、お姉ちゃん? なんで泣いてるの?」

「え……? あ、やだ、どうして涙なんか……」

 慌てて瞼を拭い、美雪は疲れた笑みを浮かべた。

「変ね、泣くような話じゃないのにね」

 今日一日の屈辱が、身体の奧でグルグルと渦を巻いていた。泣くまいと思うのに、涙は止まりそうにない。

「??お姉ちゃん、昨日から変よ? 大丈夫? なんか顔色も悪いし……」

 心配そうに顔を覗き込んでくる美鈴に、思わず背を向けてしまう。弱々しい妹を守りたい、という気持ちには変わりがないのだが、その妹までが美雪を嘲笑っているようで、胸が苦しくなった。

(どうして??どうして、私ばかり……)

 決して口に出してはならない言葉が、いまにも喉からこぼれ出てしまいそうだ。

「お姉ちゃん??」

「……ごめん。お休み」

 美雪は唇を手で塞ぎ、逃げるように寝室を飛び出した。

 

      三

 

 夏休みになった。

 他の少女にとっては待ちに待った長期休暇だが、美雪にとっては地獄のような日々が続く、辛い一ヶ月である。

 七月末、玄蕃の友人・香月圭児が娘の早苗を連れて屋敷にやってきた。早苗は、線が細く小柄な、可憐な少女である。いつも怯えたような顔をしていて、年下のはずの美雪でさえ、守ってやりたいと思ってしまう。

「早苗さん、髪伸ばしてるんだ」

 夕食時、久々に部屋を出て食卓についた美鈴は、いつになくはしゃいでいた。早苗はほんのりと頬を紅く染めながら、はにかんだように笑う。

「変、かしら?」

「ううん、早苗さんは美人だから、どんな髪形でも似合うよ。前のショートカットも好きだったけど、セミロングは大人っぽくって、なんかカッコイイ!」

 十人も座れそうなテーブルには、主の玄蕃と香月親子、そして美雪と美鈴の五人しか着いていない。人形のようなメイドたちが衣擦れの音もさやかに配膳をしている以外に動きはなく、無邪気な美鈴の声がなければ通夜の席かなにかと間違えてしまいそうな、重く暗い雰囲気があった。

「今年もずっといらっしゃるの、香月の小父様?」

 食堂にいる者のうち、秘密を知らないのは美鈴だけである。場違いなほど明るい声は、逆に美雪を不安にさせる。

「ああ、その予定だよ。ここは涼しくていいね。東京はもう暑くて暑くて」

 都心で医院を経営している香月は、職業的な人当たりのよい笑みを浮かべ、幼い少女の問い掛けに応えた。上品な顔立ちに落ち着いた声色は善人らしいが、その裏には玄蕃と同じ変態性が隠れている。美雪はナイフとフォークで厚い肉を切りながら、二人のやりとりをそわそわした気分で見つめていた。

 だから??。

「小父様、あとで私のお部屋にも来て」

 不意に発せられた無防備な言葉に、

「??美鈴っ!」

 美雪は思わず叫んでしまった。食堂の視線がサッと集中する。

「あ……いえ、香月の小父様も忙しいでしょうから、御迷惑をおかけしては……」

「なんの、休養に来ているのだから、忙しいわけはないよ」

 赤面した少女に手を振って、香月は鷹揚に微笑んだ。縁なし眼鏡の奥で、いやらしく細められた目??美雪の胸に強い後悔の思いが込み上げてくる。

「……勉強を見ていただきたいの。讃岐さんに家庭教師をしてもらってるんだけど、生物や化学は分からないって……」

 姉の顔色を窺うようにしながら、美鈴はおずおずと言った。香月は場の空気を取りなすように、あちこちに笑顔を向けながら、

「生物や化学なら、オジサンの得意分野だ。それにしても、そうか??美鈴ちゃんももうそんな歳か」

「小父様……美鈴は勉強以外することがないから、普通の子より先へ進んでいるんです。歳はまだ??」

 美雪が口を挟むと、香月はますます嬉しそうな顔になった。

「ほう、優秀なのだな。オジサンは賢い子が好きだよ」

「その辺にしておけ、圭児」

 やりとりを黙って見ていた玄蕃が、美雪の表情を見て苦笑しながら口を挟む。

「お前に勉強を見てもらわなければならないのは、美雪のほうだ。そうだろう?」

「え……ええ、そうなんです」

 助け船か、罠か??微妙なところであったが、迷っている暇はなかった。素早く頭を巡らせて、

「私、最近学校の成績が落ちていて??小父様がいらしたら、教えていただきたいと思っていたんです……」

「参ったな、美女二人からのお誘いか」

 戯けた香月は、美雪にだけ見えるように、殊更いやらしい顔をしてみせた。

「オジサンに会いたくて仕方がなかったのかい、美雪ちゃん」

「は、はい……」

 背中を、冷たい何かが這い登ってくる。罠に落ち込んでしまった感覚がある。

 睫毛を伏せて顔を俯けた美雪は、自分に向けられた刺すような視線に気づかなかった。

        *  *  *

「さあ、オジサンに見てもらいたいというのはなにかな?」

 いやらしく笑み崩れた香月が、美雪に向かって両腕を開いた。美雪は唇を噛みながら、震える指でシャツのボタンを外す。

 夕食後、疲れるといけないから、と美鈴を退席させた四人は、場所を居間に移し、淫らな宴を始めようとしていた。男二人が鈎に並べられたソファに座り、香月の娘の早苗は玄蕃の膝にしなだれかかって黒髪を撫でてもらっている。美雪は香月の前に立ち、瑞々しい裸体を晒して頬を桜色に染めた。

「ほほう、これはまた、見事な身体だ」

 好色な視線が、柔肌の上を粘着くような動きで這い回った。細いうなじからなだらかな肩へ繋がるラインは、細く柔らかい黒髪に半ば隠れている。乳房は一年前より一回り大きくなり、見事なお椀型を作っていた。白い乳房の頂点には、薔薇の蕾のような淡紅い突起があり、身体の震えを増幅して誘うように揺れている。

 昨年までは乳房の下に、肋骨が細波のように波打っていたのだが、脂肉の厚みが増したのかいまはあまり目立たない。柔らかく伸びやかな、西洋風の香壺にも似た優雅なボディライン。腹部はなだらかに起伏し、形のよいヘソが目を惹く。女性らしい丸みを帯び始めた腰部、その前面にはあるべきはずの茂みがなかった。香月が問うと、

「お、小父様に見ていただきたくて……自分で剃りました……」

 美雪は震える声で答えた。実際には玄蕃の手によって剃られたのだが、その際に「訊かれたらこう答えろ」と命じられていたのだ。自分の意思とはまったく違う言葉が羞恥心を煽り立て、美雪の肌が紅く火照り始めた。

「ほほう。可愛いことを言うじゃないか」

 中年男の卑しい視線が、少女の秘部へ集中する。

 赤子のようにつるんとした恥丘の先に、肉厚の増した割れ目があった。陰毛がないために、小指の先より小さな陰核や、まだ色づきの薄い肉の花弁が恥ずかしげに顔を覗かせている様子がよくわかる。

(そんなにジロジロ、見ないでよ……!)

 拒絶の言葉は、決して口に出せない。香月もまた、美鈴の身体を狙う変態のひとりである。美雪が身を挺して守らなければ、弱々しい妹は獣のような男たちにいいように嬲られてしまうだろう。

「お尻を見せなさい」

 香月に言われた少女は、屈辱に唇を噛みながら床に膝を着き、男に背を向けて蹲った。膝を立て、頬を絨毯に押し付けるようにして尻を持ち上げる。

 武骨な手が、尻肉に置かれた。柔肉に、五本の指先が沈み込む。

「いい手触りだ。むにむにしてるな。それに肌理も細かい。あまりお仕置きされていないのだな」

「あ、ありがとう、ございます……」

 左右の親指が、尻の割れ目に掛けられた。肛門の傍の肉を、左右にグイッと開く。

「う……」

 排泄器官に痛みを感じ、少女は辛そうに顔を顰めた。男は親指をくいくいと動かし、

「ずいぶんと伸びるようになったな。玄蕃、これは使えるのか?」

 言葉通り、鳶色の肉穴は指に引かれるまま左右へ大きく伸びた。紅濡れた内部を捲り返しながら、いいように弄ばれている。

「まだ使ったことはない。そっちの穴の処女は、お前にやるよ」

 養父の言葉に、美雪はハッと顔を強張らせた。普通に貫かれることにさえ耐え難い屈辱を覚えるというのに、常ではない場所まで犯されるとは??しかし、

「美雪もされたがっている。そうだろう?」

 にやついた顔で決めつけられると、イヤとは言えなくなってしまった。少しでも嫌がる素振りを見せれば、また美鈴を引き合いに出して脅すのだろう。この部屋で、この状況で、汚れを知らぬ妹の名を口にされることは心理的にイヤだった。だから美雪は心にもないことを、言う。

「は、はい??小父様の御肉棒を挿入ていただきたく、毎日練習してきました。どうか、美雪の汚いお尻の穴へ、小父様の御肉棒を、お入れください……」

 口上は、伯父に見せられたポルノビデオで学んだ。生理的嫌悪感はあるが、毎日のように尻尾を挿しているから、多分大丈夫??そうとでも思わなければ、悲鳴が漏れてしまいそうだった。

「いいね、いいね」

 香月はいそいそとベルトを外し、自慢の逸物を取り出した。硬く勃起したソレは、長さ二十二センチ、太さは四センチ近くある。肉棹は木の根のように捻れ、亀頭部分はクッキリとエラを張り、先が肉厚で丸い。色は黒味がかり、青く浮き上がった静脈がいかにも恐ろしげである。

「ほら、しゃぶりなさい。たっぷり濡らさないと、痛いぞ」

 促された少女は男の膝の間でもぞもぞと向きを変えると、肉棒に向けて深々と頭を下げてから、唇を寄せた。

(う……)

 生臭さに眉根を寄せながら、まずは陰嚢と淫棒の付け根にキスをする。

 ちゅぱ、ちゅぷちゅぷ、ちゅぴ??。

 身体を屈め、伸ばし、首を傾け、黒髪を揺らしながら、肉棒の周囲にキスをして回る。手は使わない。初めから犬として性技術を教え込まれた美雪は、硬さに跳ね踊るペニスを頬や顎、鼻などで巧くコントロールしつつ、整った顔を自らの唾液で汚しながら万遍なく口づけした。

 唇の次は、舌だ。

 朱唇を開き、紅い舌を伸ばして平らに広げ、再び根元から舐め始める。

 ぴちゃ、ぴちゅ、ぺちゃ??。

 肉棹の根元から先へ向けて、舌を押しつけ、伸び上がるように背を伸ばしながら、顔の角度を変え、何度も何度も舐め上げる。

 この頃になると、美雪の表情に変化が現れている。

(ああ……どうして……どうしてなの……?)

 嫌悪一辺倒だった表情が、どことなく弛み、陶酔の兆しを乗せて朱鷺色に輝き始めるのだ。涙を含んだ睫毛の下、黒い瞳は潤みながら揺れている。舌に乗る肉塊の大きさ、硬さ、生臭さ??男の排泄器官を舐めさせられているというのに、なぜか胸は高鳴り、身体の芯が蕩けてしまう。

(こんなの、変……変よ……ああ、なのに、どうして……)

 辱められ、命令され、屈従を余儀なくされている自分??そのことが、倒錯的な悦びを生み、ともすれば溺れてしまいそうだった。

 最後は唇を開き、亀頭を舌に乗せて、口腔の中へ招き入れる。唇を締め、肉棹の下を舌で支えながら、ゆっくりと頭を前後に動かし、吸う。

 羞恥に火照った身体に、牝の匂いを含んだ汗が滲み出し、薄闇の中に桜色の輝きを放ち始めた。汗を吸って重くなった髪が、濡れ光りながら揺れる。

 じゅぱ……

 じゅぷ……

 ちゅぱ……

「おいおい、いつまでしているつもりだ?」

 二、三度動いたところで、苦笑した香月に頭を叩かれ、美雪はハッと我に返った。屈辱の行為を強いられている自分に陶酔し、当初の目的を忘れていたのだ。

「もういい。さあ、尻を出せ」

 優しい声で叱られた少女は、羞恥と自己嫌悪に真っ赤になりながら、もぞもぞと向きを変えた。男に向けて尻を持ち上げ、

「お、お願いします……」

 細い指で尻肉を掻き分けて、待った。

「ようし、いい仔だ」

 少女の唾液で濡れた逸物を掴み、香月は床に膝を着いた。亀頭の先を左右に伸びて紅い粘膜を捲り上げた肛門に押し当て、ゆっくりと体重を掛ける。

「あ……あうぅ……」

 熱く硬い異物が入ってくる。

 美雪は唾液に汚れた唇を喘がせて、息を吐いた。

(お、大きい……っ!)

 反射的に絞まろうとする括約筋を押し分けて、男根が直腸の中へ潜り込んでくる。排泄反射が起きて、便意が急速に膨れあがる。

「う……くぅ……っ!」

 痛い。

 破瓜とは違う、重苦しい痛み。

 排泄物が逆流してくるような、胸の奥が熱くなるような??言いようのない感覚。

「ふ、ぁああ……ン、くぅぅ……っ!」

 息が詰まる。

 紅くなった顔に、珠のような汗が浮き、涙と混じりながら滴り落ちた。少女の手は絨毯を虚しく掻きむしり、女性にはなりきっていない細い身体が苦痛に震える。

「く……もう少し、力を抜け。入らんぞ」

 あまりのきつさに、香月が唸るような声を上げた。しかし排泄器官を犯されている美雪は、高まった便意と激しく蠕動する腸が引き起こす腹痛に顔を顰めていて、力を抜くどころではない。

「く、ぁあっ! だ、ダメ……い、痛い……挿入れないで……っ!」

 たまらず叫んでしまう。

 ふわり、とよい香りに包まれた。

「うぁ……?」

 泣き顔を上げると、すぐ傍に早苗の顔があった。

 哀しげな微笑みを浮かべた少女は、涙に濡れた美雪の顔を両手で挟むと、そっと睫毛を伏せてキスをする。

 にゅるり。

 温かな舌が美雪の口の中に潜り込んできた。

(や、やだ……こんなときに……やめて……)

 混乱している少女の髪を優しく撫でながら、早苗は濃厚なキスを続ける。舌で舌を絡め取り、唾液を交換し、歯茎を舐め、息を吹き込む。

 にちゃ、ぬちゃにちゃ??。

 口づけとは思えないほどいやらしい音を立てながら、ふたりの美少女は顔を捻り、唇が歪むほど強く押しつけ合う。

 僅かに色合いの異なる黒髪が重なり、揺れ、さやさやと幽かな音を立てて擦れ合った。

 早苗は片方の手で美雪の頭を抱えると、もう片方の手を伸ばし、身体の下で揺れていた乳房に触れた。柔肉を揉み、乳首を指の間に挟んで抓り、震わせ、くすぐるように掻く。敏感な部分に暖かな快悦が生まれ、脂肉の中へじわじわと染み込んできた。

(うあぁ……痛い、痛いの……こんなになってるのに……どうして……どうして助けてくれないの……?)

 唇を塞がれた美雪の顔に、陶酔の色が浮かんでくる。

 早苗のキスや乳房への愛撫が巧いこともある。

 痛みに強張った身体が疲れ、力が抜け始めたこともあるだろう。

 しかしそれ以上に、弄ばれている自分が強く意識され、倒錯的な肉悦が身体を満たし始めているのだ。

 排泄器官を犯されている自分。

 泣いて助けを求めているのに、同性の者に唇を奪われ、胸を弄ばれて感じてしまう自分。

(こんな……こんな私……イヤ……イヤなの……)

 思えば思うほど、頬が弛み、身体が熱くなる。

 全身の筋肉が蕩け、真綿のように柔らかくなった。

「お……入る、入るぞ」

 亀頭が潜り込んだところで行き詰まっていた肉棒が、ゆっくりと少女の中へ入り始めた。唾液のぬめりを利用して、押し出そうとする腸壁に逆らい、ズブズブと侵入していく。

「ようし、よし??もういい、早苗。下がれ」

 根元まで突き込んだ香月は、締めつけのきつさに苦笑しながら、娘を追い払った。そして震え泣く美雪の身体に腕を巻きつけ、よいしょ、と声を出しながら立ち上がった。

「あぅっ!」

 姿勢が変わると、肉棒が胎内を抉るように動いた。ビクン、と喉を反らし、苦悶の声を上げる美雪。

 男がソファの上に腰を降ろすと、ペニスに伝わった衝撃が腹の中から美雪を打つ。

「ひぎぃ……っ!」

「おお、絞まる絞まる。痛いくらいだ」

 弓なりに反った少女の背に唇を押しつけながら、香月は満更でもない顔で言った。脇から通した両手を交差させ、左右の乳房を揉みながら、スプリングを軋ませて身体を上下に揺する。

「ひぎっ! あがっ! うっくぅぅっ! う、動か、ない、でぇっ!」

 僅かな動きも、貫かれた肛門には激痛であった。胎内のペニスも、その際立った亀頭で腸壁を抉り、擦り、掻き混ぜる。便意はますます高まって、腸は激しく捻れ動いた。ぎゅるるるる、と腹が鳴る。

「おお、温かい粘膜の壁がぬめぬめと動いて、気持ちいいぞ。オチンチンが蕩けそうだ」

「ひぁあっ! うぁあっ! や、やぁっっ!」

 真っ赤になった顔を振り、髪を乱して悶える少女。胸をまさぐる男の手に自分の指を絡め、引き離そうとしているのだが、肉棒を突き込まれているために力が出ず、骨の浮き上がる手の甲をもどかしく撫でさすることしかできない。

「ふぁ……っはぁう……ああっ!」

「行くぞ、行くぞ行くぞ??うっ!」

 ビクッと動きを止める香月。

 熱い白濁液が、少女の結腸を叩いた。

 

        四

 

 翌朝。

 香月に綱を引かれ、美雪は日課になってしまった朝の散歩に出た。隣には同じように裸に剥かれた早苗が、双子のように似た暗い顔をして這っている。二人とも、肛門から長い尻尾を生やしていた。膝を着けないようにしているため、高く持ち上がった尻が左右に揺れて時折ぶつかる。互いの肌の暖かさに、二人は気恥ずかしさを覚えながら這っていた。

「甲乙つけがたい尻だな」

 朝露を踏んで這う二匹の少女犬のうしろから、ニタニタと笑み崩れた男が声をかける。手にした犬鞭をこれ見よがしにヒュンヒュンと鳴らし、

「ほら、さっさと歩け。美鈴ちゃんが起きてしまうぞ!」

 低い声で罵り脅した。

「ノロノロしてると餌抜きだ。自分の出したクソでも喰うか?」

 香月は、美鈴の前では紳士然としているのに、美雪や早苗だけの時には下品な言葉遣いになる。本業の医者としてはなかなか評判がよいそうだから、いつもは紳士の仮面を被っているのだろう。実の娘を性奴隷として飼っているのは、そういった二面性のゆえかも知れない。

「さあ、やれ」

 立木に着くと、二人の少女は交互に脚を上げて小便をする。

 ちょろろろろ??。

 黄色い飛沫は一筋になって木の根を濡らし、湯気を立てながら地面に着いた膝のほうへ流れてきた。柔肌が汚れるが、気にしてはいられない。

「ようし、もう小便はいいな。次の樹ではウンチをさせてやる」

 鞭に追い立てられて、少女たちは泣き濡れた顔を俯けて再び這い始める。

 屋敷の角を曲がり、美鈴の部屋のある面へ出た。

(美鈴の部屋からは、離れた場所で??)

 一番近くにある庭木に近づこうとした美雪の腰に、鞭が鋭く打ちあたった。

「ぃきゃんっ!」

「そこじゃない。むこうの樹だ!」

 美雪が思わず首を竦めてしまうほどの大声で、香月が叫んだ。

(だ、ダメ……美鈴に聞こえちゃう……)

 蒼褪めた少女に鞭を振り上げ、

「さっさと歩け! お前がぐすぐすしてるから、大声を出すんだ!」

 男は歪んだ笑みを浮かべた。

 少女犬に拒否権はない。

 涙をこらえ、指し示された樹に向かってヨタヨタと這うしかなかった。

「よし、そこでしろ」

 ようやく排泄を許された場所は、ちょうど美鈴の部屋の正面であった。

(起きてないよね、美鈴??)

 祈るような気持ちで見上げると、鎧戸は閉まっていた。ホッとしたのも束の間、尻にヒンヤリとした手を置かれ、美雪は思わず悲鳴を上げた。

「ひゃっ! ……な、なに?」

 振り返ると、美雪の尻に手を置いた早苗が、困ったような顔をしている。

「尻尾……抜かないと……」

「あ……そうですね……」

 言葉は禁じられているのだが、犬同士の会話は許されていた。二人は顔を赤くしながら、交互にそれぞれの尻尾を抜き合う。

 プラグが引き抜かれた肛門は紅い粘膜を見せながらポッカリと肉穴を広げていた。

「こちらに尻を向けてしろ。俺が見ていてやる」

 屋敷を背にした香月が、しゃがんで覗き込むような格好をしながら言った。美雪も早苗も、羞恥と屈辱に震えながら、うん、と息む。夏草に尻を向け、顔を紅くした二人の美少女がしゃがみ込んでいる様子は、なにやら滑稽であった。清らかな朝日を受けた白い肢体が白磁のように輝いて見える。

 ……に、ちゃ……

 湿った音を立てながら、肛門が膨れあがった。粘膜が花弁のように広がり、焦げ茶色の汚物が顔を覗かせる。

 むぬぬぬぬ……

 男根を挿入られるよう拡張された直腸から押し出される大便は、可憐な少女がひり出したとは思えないほどの太さであった。茶色い腸液を滴らせながら、盛りあがった肛門を押し分けてゆっくりと伸びてくる。爽やかな夏の朝気に鼻を突く生臭さが混じった。

「さあ、どっちが早い? 美雪が一歩リード。頑張れ早苗。そら、もっと息め!」

 震える少女の尻に声援を送る香月。くぅう、と呻いた美雪の肛門がキュッと窄まり、汚物の塊を切った。柔らかな大便が草の上にベチャリと落ちる。

「ああ、ダメだ。途中で切れたら失格。逆転したぞ早苗。さあ、美雪も頑張れ!」

 男の言葉は実に幼稚でくだらないが、それ故に、少女たちの恥ずかしさは募る。裸を見られているだけでも舌を噛み切ってしまいたくなるような羞恥を覚えているのに、排泄行為まで覗き込まれ、嘲笑われることは、気が狂いそうなほどの屈辱であった。

(で、でも??)

 早くしないと、美鈴に見られてしまう。

 その一心で、美雪は息み続けた。

        *  *  *

 散歩のあとは屋敷に入り、朝食を取る。

 このときも、二人の少女は犬として扱われていた。

 十人掛けのテーブルに、玄蕃と香月が座っている。美雪と早苗は裸のままその脇におすわりをし、飼い主が投げ落とす「餌」を待っていた。

「美雪ちゃんはずっと犬らしくなりましたな。そろそろ品評会に出してはどうですか」

「いやあ、まだまだです。早苗ちゃんこそ、品評会に出さねばならんでしょう」

 そんな会話をしながら、二人は卵焼きの切れ端やパンの耳を、予告もなしに落とす。床に屑が残っていれば罰せられるため、少女犬たちは屈辱に耐えながらも綺麗に食べなければならない。

 もちろん犬だから、手は使えない。口を直接床に着けて食べるのだ。床は毎朝メイドたちが鏡のように磨き上げているが、やはり汚い感じがする。固形物だけならまだいいが、目玉焼きの油やパラパラと散らばるパン屑などは、舌で舐め取る必要があった。

(どうして……こんな……)

 ワックスの匂いに咽せながら、美雪はソーセージを食べ、床に着いた油の跡を丁寧に舐めた。屈辱的な行為ではあるが、口の中に広がる肉の味は本物で、空腹だった少女は思わず幸せそうな笑みを浮かべる。

 一方の早苗は、投げ落とされると機敏に飛びつき、パクリと咥えていた。肩まである黒髪が踊り、滲んだ汗に絡み取られて紅潮した顔に貼りつき、妖しい模様を描く。機敏に躍動するたびに、身体の割に大きな乳房がゆさゆさと揺れた。伸びやかな脚の筋肉が美しく伸縮する。その姿は裸の少女と言うより、別の美しい生き物のようだ。美しい顔には羞じらいと陶酔が同時に浮かび、黒目がちの大きな瞳はキラキラと輝いていた。

「ほら、またひとつ芸を覚えている」

「仕込んだワケではないんですがね。いつの間にかするようになっていました」

 玄蕃は美雪の頭を叩き、苦笑した。

「聞いたか、美雪。お前もあれくらいのことはしろ」

「う、わぅん……」

 床に落ちた餌を涙しながら食べるのと、自ら飛びついて食べるのと、どちらが人間的な行為なのか??難しい問題であった。

        *  *  *

「お姉ちゃん、小父様にお勉強見てもらえた?」

 昼食後、ようやく休憩をもらえた美雪が妹の寝室を訊ねると、ベッドの上に腰掛けて手持ち無沙汰にしていた美鈴は少しムッとした表情でそう訊ねた。

「う、うん??」

「なによ、気のない返事ね」

 病弱な少女は蝋のように白い顔に血の気を登らせ、ぷん、と頬を膨らませる。

「私から小父様を取っておいて、それはないんじゃない?」

「と、取るだなんて??」

 しどろもどろになりながら言い訳を探す美雪を無視し、少女は拗ねた顔を横に向けて、

「お姉ちゃんは狡いよ」

 ギクリ、とするほど暗い声で言った。

「ず、狡い……?」

「そうよ。狡いわよ」

 睨みつける幼い顔の中で、クリクリとした大きな瞳の中にだけ、大人びた表情がある。

 ??嫉妬。

 いくら雑菌を避けて大事に大事に育てていても、成長をすればいつか必ず芽生えてしまう負の感情。

(ああ……美鈴……お願い、そんな目をしないで……)

 心痛ませる姉の気持ちなどお構いなしに、妹は尖らせた唇を動かして言い募る。

「お養父様も小父様も、みんな取っちゃう。非道いわ、あんまりよ。久々に会えたのに、お赦しがなければベッドの上から降りられない私は、甘えに行くことができないのよ?」

「甘えるって、美鈴……」

 あんな男に??という言葉は辛うじて呑み込んだ。妹は知らないのだ。彼らが如何に卑劣で、おぞましい存在であるかを。

「早苗さんだって、そうよ。そりゃあ、私の部屋に来たって、面白いものはないかも知れないけれど……夏休みになったのに、誰も来てくれない! あんまりよ!」

 わっ、と泣き崩れた少女に、美雪は掛ける言葉がなかった。彼らを美鈴から遠ざけているのは、確かに美雪なのだ。その理由はしかし、説明できない??したくない。

「ごめん……ごめんね、美鈴」

 細い肩に手を置いて、ベッドの横に跪きながら顔を覗き込む。美鈴は身体を揺すって手を振り払おうとしたが、できないと悟ると、身体を捻って顔を背けた。

 気まずい沈黙が部屋を満たす。

(美鈴??お願い、そんな顔をしないで??)

 この世でたったひとりの肉親??玄蕃は伯父だが、肉親として認めたくない??だから、こんなことで喧嘩をしたくない。美鈴に嫌われないためにはどうするか……しばし考えてから、美雪は口を開いた。

「じゃあ、私もここで勉強するわ。それならいいでしょう?」

「……小父様も、一緒?」

「うん、もちろん一緒よ。小父様だけじゃないわ、早苗さんにも来ていただきましょう」

 私が目を光らせていれば??不安はあったが、これ以上感情を昂らせると美鈴の身体によくないだろう。そう思い、提案すると、ようやく幼い妹は機嫌を直してくれたようだ。

「いつから?」

「明日から??ううん、都合がよかったら、今からでも」

 紅くなった目に見つめられると、ついつい甘くなってしまう。安請け合いした姉に、妹は再び敬愛の表情を見せた。

「じゃあ、ちょっと訊いてくる」

「うん??お姉ちゃん」

 扉に手をかけた美雪は、気弱そうな声に振り向いた。美鈴は布団の端を弄りながら、気まずそうな顔で、ごめんね、と言う。

「非道いこと言っちゃった。ごめんね」

「……いいのよ、そんな」

 不意に涙が出そうになり、美雪は慌てて笑顔を作り、部屋を出た。

        *  *  *

 藤城亭の部屋は、どれもこれも大きい。あまり立ち上がることのない美鈴の部屋も、例外ではない。大人ひとりと少女が三人、ベッドの周囲に集まっても狭いと感じることがないほどだ。

「小父様、これ教えて」

「うん? どれどれ……」

 美鈴と香月のやりとりをハラハラしながら見つめる美雪。彼女は床の上に卓袱台を置き、早苗と額をつき合わせるようにして夏休みの宿題を広げている。シャープペンシルは手にしているが、まだ一文字も書いていなかった。向かいに座った早苗も同じである。

「……ん」

 セミロングの黒髪をポニーテールにまとめた少女が、小さな声で呻いた。あまりにも小さくて、聞いたのは美雪だけだった。手を伸ばし、甲に触れると、早苗はビクッと首を竦めながらほんのり紅く染まった顔を上げる。

「ご、ごめんなさい……」

「静かに。謝らなくてもいいから……」

 顔を寄せて囁いた美雪も、頬を桜色に上気させていた。卓袱台の下、紅い絨毯の上にアヒル座りした太腿を、無意識のうちに摺り合わせている。

 二人とも、陰部に媚薬を塗り込まれているのだ。美鈴の部屋で勉強を見てくれ、と言った時、意地悪く笑った香月から出された条件が、それだった。

「お前たちがしなければならないのは、いやらしい勉強だろう? 美鈴の傍でそれをするのか? 大胆だな」

 それほど言うならなにもしなければいいのに、サディストの男はまたとない機会だ、とばかりに二人の股間へ媚薬を塗りつけた。それは次第に効力を発し、ただでさえ敏感な秘部をジンジンと責めている。美雪ほど美鈴に気兼ねしていない早苗は、すぐにでも乱れてしまいそうな気配であった。

「これをこうして??な、こうなるだろう?」

「ああ、ホントだ! さっすがぁ!」

 苦しんでいる二人とは対照的に、美鈴は香月の教え方に満足している様子だ。嬉しそうな妹の声を聞き、ホッとしながら視線を上げた美雪だが、すぐに顔が強張る。

 ベッドに腰を降ろした香月は、美鈴の細い肩を抱くようにして背後に覆い被さり、白く小さな手を握ってペンを動かしていた。ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている。

(な……なにをしてるの? 離れて……離れなさいよっ!)

 無言の叫びに気づいたのか、ふと顔を上げた香月は歪んだ笑みを深めながらゆっくりと立ち上がった。

「どうしたんだ、美雪ちゃん。なにか分からないところでもあるのか?」

「え……あ、はい! ここなんですが……」

 美鈴から男を引き離すため、美雪は白紙のままのノートを指差して言った。香月は名残惜しそうに美鈴の髪の匂いを嗅ぎ、ゆっくりと立ち上がって美雪に近づく。

「どれどれ??ああ、これはちょっと難しいな」

 横に座った男は、広い背で美鈴の視線を塞ぎながら卓袱台の下に手を伸ばし、美雪の太腿をそっと撫でた。

「……っ!」

 むらっと込み上げてきたのは、怒りではなく、淫らな欲望。

 思わず漏れそうになった声を、唇を噛んでこらえる。

「xをyに代入するだろ? それでこれを??」

 どこまでも平然とした香月の声に焦れながら、美雪はふと、頬に突き刺さる視線を感じ、顔を上げた。

 ベッドの上から、美鈴が暗い目を向けてきている。

 小父様に色目なんか使って??そんな言葉が聞こえたような気がした。

(ち、違う……違うのよ、美鈴……これは、美鈴のために……)

 言い訳は、もちろんできない。

「??と、こうなるわけだ。分かったかい?」

「え……あ、はい、ありがとう、ございます……」

 震える声で答えた美雪は、立ち上がろうとした香月の袖を引き、別のページを開いた。

「これも、教えてください……」

「おいおい、そう言ってオジサンに全部やらせる気じゃないだろうな」

「そうよ、お姉ちゃん。今度は私の番!」

 香月と美鈴はピタリと息を合わせ、顔を赤らめた少女を責める。その間も、男の手は美雪のスカートをまさぐり、汗で蒸れた内腿へ潜り込んで秘部にじわじわと近づいていた。これ以上されたら、我慢できなくなる。

「……分かりました」

 美雪はおずおずと引き下がるしかなかった。

 

      五

 

 夏休みも半ばほどが過ぎた。

 午前中は恥辱の調教を受け、午後は美鈴の部屋で胃の痛むような光景を見せられる毎日に、美雪は徐々に疲弊し、次第に表情を失ってきた。

「お姉ちゃん、夏バテ? 顔色悪いよ」

 美鈴に心配されても、口元だけで弱々しく微笑むことしかできない。

 そして、とりわけ蒸し暑い日に??。

(あ……地震だ……)

 ゆらり、と視界が揺らいだのを最後に、美雪は意識を失った。

        *  *  *

 チクリ、と腕に痛みを感じ、美雪は呻きながら目を開けた。痛みの点を中心に、冷たい心地良さがじわじわと広がってくる。

「ん……ああ……?」

 気がつくと、地下室にある分娩台のような拘束椅子に乗せられ、四肢を固く戒められていた。裸のままだ。膝を曲げた脚は大きく左右に開かれ、天井のほうが多く見えるほど背もたれが倒されている。

「目が覚めてしまったか。安心しろ、ちょっとした疲労だ。栄養剤を打ったから、すぐに元気になる」

 注射器を抜きながら、香月が言った。いつものいやらしい変態の顔ではなく、医者らしい精悍さと信頼できそうな風格がある。

(……美鈴には、こんな風に見えているのかしら……)

 だとすれば、あれほど愛着の念を示すのも、分かるような気がした。自分に向けられた優しさと気遣いに、胸の奥がポカポカと暖かくなってくる。

 頭がぼんやりとしていたため、どうして拘束椅子に座らされているのか、不思議に思うことはなかった。

「驚いたぞ、美雪。辛いなら辛いと、先に言え」

「そうよ、美雪ちゃん。無理をして身体を壊したら、元も子もないじゃない」

 玄蕃や早苗に覗き込まれ、彼らの心配そうな顔に思わず微笑みを返してしまう。

「圭児がいてよかったよ。俺だけではどうしたらよいか分からなかったぞ」

「美雪ちゃんも美鈴ちゃんと同じ血を引いているんだ。身体は丈夫じゃないんだから、無理をさせたらいけないな」

 無理をさせた張本人はぬけぬけと言いながら、アルコールで湿した脱脂綿で美雪の紅い乳首を拭った。敏感な場所を冷たくされ、美雪はうふん、と目を細める。

「気持ちよがっているな。これなら大丈夫そうだ」

 そう言って、香月は切符切りのような器具を取り出した。ぼうっとしている美雪の胸に近づけ、乳首を挟む。

「あ……ひっ!」

 胸の先に激痛が走った。背を反らして呻く美雪。

「痛かったか? 大丈夫、栄養剤を打ったからな。耐えられるはずだ。我慢しろ」

 ニヤリ、と笑ったサディストの医師が、もう一方の乳首も挟む。

 ??つぷり。

「ひぎぃ……っ!」

 眠気は吹き飛んだ。

 ようやく拘束されている意味を理解した。

「や……やめてっ! あふっ……ンっ!」

 香月は少女の声を無視し、アルコールを含んだ脱脂綿でクリトリスを拭う。そのまま指を動かして包皮を剥くと、神経の塊のような肉真珠にこらえようのない快感が走った。

「ふ、ぁあ……」

 ヒンヤリとした心地良さに、美雪は痛みも忘れて甘い声を漏らしてしまう。愛撫に慣れた身体が反応し、肉芯がじわりと潤んだ。

「やめて、じゃないだろう。ピアスを着けてやるんだ、喜べ」

 玄蕃が両手で涙を流す少女の頬を挟み込み、白い歯を見せながら微笑んだ。とろんとした笑みを浮かべた早苗が、血を垂らしている美雪の乳房を揉み解しつつ、

「私もしてもらったの。とっても可愛いのよ」

 あやすように囁く。

「い、要らない……可愛くなんか、なりたくない……ひぎゃっンっ!」

 激痛が突き刺さる。

 皮を剥かれた肉豆に、孔が開いたのだ。

 神経の密集した小器官の内部を貫通した硬い金属が、キリキリと感じられる。

「ひぎぃぃ……痛い痛い痛い??っ!」

 孔開け器具はすぐに取り除かれたものの、血の珠をこぼすクリトリスはジクジクと痛みを発し、あまりの強さにそれ以外の感覚が分からなくなった。

「ひぃうぅううう……」

「泣き虫だな、美雪は??おっと、麻酔を忘れていた。痛むはずだ。悪かったな」

 わざとらしく首を竦めた香月が、ポケットからビロード張りの小さな箱を取り出し、蓋を開けた。中から金色に輝くリングピアスを取り出し、玄蕃と早苗にひとつずつ渡す。

「飼い主の玄蕃が、お豆に挿せ」

「いいのか? 巧くできるかな?」

 早苗が左、香月が右の乳房に着き、玄蕃が股間に顔を寄せた。三人はタイミングを合わせ、少女の敏感な部分に開いた孔へ金属の先を通した。

「??っ!」

 冷たい金属が神経を直接撫で、ピリピリとした痛みが三箇所に走る。美雪は声にならない悲鳴をあげ、長い黒髪を振り乱して断末魔のように痙攣した。

「さあ、可愛くなったぞ」

「似合ってるわよ、美雪ちゃん」

「褒めてるのに、どうしてそんな顔をしてるんだ? お前はやっぱりバカ犬だな」

 嘲笑の声が虚ろに響く。

 あまりのことに、頭がくらくらしてきた。

 同時に??。

(あ……なに、これ……)

 ぞくり、と肌が粟立つ。

 剃り上げられてつるんとした恥丘の奥、悦びの肉壺がぐじゅり、と蠕動した。

 羞恥に頬が火照る。

 心臓がドキドキと音を立てる。

(ど、どうして??どうしてなの……どうしてこんなことが……私……)

 虐げられた少女の中で、なにかが目覚めようとしていた。

 暗く甘く、淫らに熱いなにか??深い深い、記憶の奥底にある、なにかが……。

 ふっと視界が揺れた。

 落下する感覚。

 美雪は再び意識を失った。

        *  *  *

 くすくす??くすくす??。

 衣擦れのような、幽かな笑い声が聞こえる。

(……美鈴?)

 それは確かに、妹の声だった。

 しかし、どこかネジの外れたような、狂気の匂いを感じる。

(どうしちゃったの、美鈴……ねえ、どうしちゃったの……?)

 不安に駆られた美雪は、ゆっくりと瞼を開いた。

 地下室の天井が見える。

 身体はまだ、拘束椅子に縛りつけられたままであった。

 そして??。

「……み、美鈴!? ど、どうしてここへ……?」

「お姉ちゃんの準備ができたからって、呼ばれてきたの」

 妹は実年齢より幼い顔に狂気を含んだ笑みを浮かべながら、紅くなったり蒼くなったりする姉に当たり前のように言った。見慣れたパジャマを着てはいるが、まるで別人のような雰囲気である。

「よ、呼ばれたって……お養父様は? いるの? お養父様っ!」

 五月蠅い奴だ、と低い声で唸りながら、美鈴の背後に玄蕃が立つ。大きな手が細い肩に置かれると、美鈴は幸せそうに目を細め、男の熱い胸に頬を擦り寄せた。

「や、やめなさい、美鈴っ!」

 馴れ馴れしい仕草に、胸が痛む。あれほど頑張って遠ざけていたというのに、いつの間にか魔手は妹の首に掛かり、虜にしていた。自尊心を押し殺し、屈辱にひたすら耐えてきたのはなんのためだったのか??なにかが音を立てて崩れていく。

「非道い……約束が違うっ!」

「約束? 約束って何よ?」

 泣きながら叫んだ美雪に応えたのは、玄蕃に肩を抱かれた少女であった。醜く顔を歪め、着けられたばかりの乳首ピアスに指を掛けて、

「あ……だ、ダメ、ひぁンっ!」

 千切れろとばかりに捻る。激痛に、美雪は髪を振り乱して悶えた。

「お養父様をひとりじめにするための約束? 非道いのはお姉ちゃんよ! お父さんやお母さんが死んじゃって、寂しいのは私も一緒よ。なのにどうしてお姉ちゃんだけ……」

「ち、ちが……それは違うわ……あひっ!」

 乳首に走る痛みが美雪の言葉を封じた。美鈴はますます顔を歪め、幼い頬に暗い陶酔を乗せて憎しみのこもった声で言う。

「お姉ちゃんはみんな取っちゃう。私が起きられないのをいいことに、みんなみんな独り占めしちゃう。狡いよ。お姉ちゃんは狡いわよ」

「違うんだってばっ! 美鈴のために、私は……っ!」

「はん、またそれ?」

 少女は手を離すと、ピシャリと姉の頬を叩いた。

「美鈴のため、美鈴のためって……私はもう赤ちゃんじゃないのよ。ちゃんとオチンチンだって舐められるし、セーエキだってこぼさずに呑めるのよ? お姉ちゃんよりずっと賢い仔犬なんだから」

「……っ!」

 まさかとは思っていたが、もうそこまで??絶望に目が眩む。再び気を失いかけて、妹の声に引き戻された。

「お養父様はね、お姉ちゃんより私のことが好きなんだって。香月の小父様もよ。私のほうが物覚えがいいんだって。ピアスだって、もうずっと前にしていただいたの。見て」

 言って、美鈴はパジャマを脱いだ。

 現れた身体はまだ二次性徴が薄く、幼気でさえある。

(ああ??なんてことを??)

 しかし平らな胸の二つの頂点には、美雪のモノと同じピアスが施されていた。傷ひとつない身体を恐る恐る見下ろしていくと、まだ無毛の恥丘の先に、やはりピアスがある。黄金色の金属環に貫かれたクリトリスは小指の先ほどもの大きさがあり、病弱な身体の中では異常に目立っていた。

「これって身体にいいのよ。お陰で最近では、ベッドの中にいなくても大丈夫なの。お養父様に抱いていただいても、寝込まずに済むようになったし??どうしたの、変な顔してるよ、お姉ちゃん」

「み、美鈴……貴女、騙されてるのよ……」

 頭の中がグチャグチャになっていた。学校にあまりいけなかった美鈴は、普通の少女がどういうものかよく分からないうちにおかしなことを刷り込まれ、虐待されるのが普通だと思い込んでしまったようだ。かといって、どうしたらその誤解を解けるのか、混乱している美雪にはまったく分からない。

「こ、こんなの、普通じゃないの……おかしなことなのよ……」

 絶望に打ち拉がれながらも震える声でなんとか言うが、

「そんなこと言って、自分だけ愉しもうっていうんでしょう? もう騙されないわよ」

 美鈴は自慢げに胸を張った。

「私がベッドに寝たきりだから、何も知らないって思ってるんでしょう? 残念でした。お姉ちゃんが学校に行っている間に、お養父様からちゃぁんと教えてもらっているもの。讃岐さんも他のメイドさんも、お養父様の御肉棒を挿入てもらって嬉しいって言うのよ。そりゃあ、ピアスされてるようないい仔は少ないけど??だから逆にみんな一生懸命御奉仕するの??お外に出る時は、ピアスしてないと恥ずかしいんだってね? お姉ちゃんもずっとピアスしてもらえなかったから、学校でずいぶんと恥ずかしい思いをしていたんでしょう? 私に感謝してよね。お姉ちゃんが毎日お庭でオシッコしたりウンチしたりしてるのを見て、頑張ってるからオマケしてピアスをしてあげてって、私がお養父様に頼んだんだから」

「み、美鈴……」

 完全にずれた認識に、美雪は言葉を失ってしまった。否定しようにも、自分の身体にもすでに淫らな改造が施されているので、説得力はないだろう。

「もうその辺りにしておけ。お前と違い、美雪は頭が悪いんだ。もう少し時間を掛けないと、ピアスされた悦びが湧いてこないんだろう」

「わぅん?」

 養父には犬の鳴き真似で応え、

「そうなの、お姉ちゃん? ダメねぇ」

 美雪には言葉をかける。犬と人間を見分けているのだ。

(なにも、そこまで??)

 思うが、声にはならない。

「さあ、これからは姉妹ともに、可愛がってやるぞ」

「わんわん!」

 妹の鳴き声が、美雪の耳に虚ろに響いた。

 

      六

 

 朝の庭に、三匹の少女犬が這っている。

 もっとも活き活きとしているのは、一番小柄で幼い顔をした仔犬であった。一匹だけ上半身にセーラー服を着て、紅潮した顔を振り上げて跳ねるような足取りで這っている。

 逆に、いつまでもグズグズしているのは、先頭を行く仔犬によく似た顔立ちの少女犬である。半熟の肢体の下、重力に引かれていつもより大きく見える乳房の先と、尻を持ち上げ大きく開かれた股間に鈴がぶら下げられていて、一歩ごとにチリチリと軽やかな音を立てていた。

 金色のそれが朝日を浴びて輝くたびに、少女犬の顔には辛そうな表情がよぎった。鈴の重さと小さな金属球が転がる振動に、乳首やクリトリスを責められているらしい。足取りは乱れ、ともすれば倒れそうになる。

「お姉ちゃん、何をグズグズしてるの? またお庭に居残りさせられたいの?」

 美鈴に叱られた美雪は、一瞬だけ悔しそうな表情を浮かべた。妹はムッと唇を尖らせると、タタタッと這い戻り土に汚れた手で姉の横っ面を叩く。

「きゃんっ!」

「なんて顔するの、お姉ちゃん! そんなことだから、バカだバカだって言われるのよ。妹の私にきついことを言われて怒ったの? だったらその気持ちを、早くちゃんとした犬になれるよう努力するほうに向けなさい!」

 香月親子が思わず苦笑してしまうほどの剣幕であった。

「それくらいで赦してやれ、美鈴。美雪は頭が悪いんだ。じっくり時間を掛けて教えていけばいい」

「くぅん?」

 甘い言葉を掛ける男に不服そうな顔を向け、首を捻る美鈴。頬を押さえて啜り泣く姉に向かっては、

「これだから、お姉ちゃんは??同情惹くのが巧いのよね」

 苦々しそうに吐き捨てた。

(非道い……こんなの、あんまりだわ……)

 再び這い始めた美雪は、声に出さずに思う。あれほど大事に思っていた妹が、いつの間にか美雪を責める側に回っていた。養父がきちんと約束を守っていれば、こんなことにならなかったはずだ。

 なんとか美鈴の洗脳を解けないか??そう思い、もはや耐える必要のなくなった虐待に大人しく付き合っているのだが、その端緒が見つけられる前に、後悔と屈辱のために気が狂ってしまいそうである。

 立木が来ると、美鈴は率先して脚を上げ、小便をする。早苗と美雪は羞じらいのために頬を染めるのだが、幼い妹はむしろ喜々として、誇らしげに犬小便をしていた。

「ほう、さすがに美鈴だ。巧いな」

「わんわん!」

 すかさず鎖を握る香月が褒め、幼い少女は無邪気に喜びを表現する。

(美鈴……貴女、本当にもう……)

 犬になってしまったのね??そう思うと、胸の奥がズキリと痛んだ。

        *  *  *

 食事の際、早苗の示した妙技に、美鈴はライバル心を抱いたようだ。投げ降ろされる食事の切れ端を、自分も飛び上がって咥えようとする。しかし運動し慣れていない身体では巧くできず、たちまち顔やセーラー服は油まみれになってしまった。

「汚いなあ。美雪、舐めて綺麗にしてやれ」

「え……うぁん?」

「お姉ちゃんだろう? 妹の世話をするのは当たり前じゃないか」

 こんな世話の仕方は当たり前じゃないわ??ムッとしながらも、美雪は言われるまま、悔しそうにしている美鈴の顔を舐めた。頬や鼻の頭をピチャピチャ舐めてやると、妹はくすぐったそうに笑う。その声は無邪気なものなのに、なぜか可愛く思えない。

「まっすぐ落とすからな。美鈴は口を開けて待ってろ」

 玄蕃はそう言って、ソーセージを小さく切って抓み、あーんと大きな口を開けた美鈴目掛けて落とした。

「うっ!」

 喉を直撃されたのか、少女は涙目になりながらケホケホと吐く。

「ははは、バカだな美鈴。ちゃんと食べろよ」

 嘲笑されても、幼い少女は照れ笑いを浮かべただけで腹を立てなかった。自分の吐き出した肉の断片を床に見つけると、躊躇いもせず顔を寄せ、啄んで、床に着いた油の跡を綺麗に舐め取ってしまう。

「そら、今度は美雪の番だ??なにをしている、あーんしろ、あーん」

 妹のようにはできない姉は、屈辱に涙しながら口を開けた。

        *  *  *

 目の前で、美鈴の肛門が犯されている。

「ひぃぃ……くぅぅ……」

 幼い身体に、香月の巨根はいかにも辛そうだった。肛門の皺は伸びきり、血の気を失って白くなっている。なのにそれはズブズブと、ゆっくりとではあるが確実に、幼い身体の中へ入っていってしまう。

(ああ、美鈴??)

 幼気な妹が犯されているというのに、なにもできない。無力さに打ち拉がれている美雪は、後ろ手に縛られて壁際につながれ、猿轡を噛まされて震えていた。ダメな仔のレッテルを貼られた美雪は、二人に抱いてもらえないのだ。

(誰が、抱かれたいもんですか??)

 そう思うのだが、

「あっ! ああっ! 小父様素敵っ! さ、早苗をもっと、グチャグチャにしてぇ!」

 後背位で玄蕃に犯され、あられもない声を上げている早苗や、

「あふぅ……入った? ねえ、入った?」

 上擦った声で香月に問う美鈴を見ていると、なぜか胸がドキドキし、取り残されたような気分になる。

(こんなの、変よ……絶対に変……)

 言い聞かせているのだが、だんだんと正常と異常の境目がぼやけ、ともすれば逆転しそうになっていた。

「うぁあ……は、入った……ねえ、お姉ちゃん見て! 香月の小父様のが、ちゃんと入ったわよ!」

 胡座を掻いた香月の腿に脚をかけて大きく股を開きながら、苦悶と愉悦に頬を赤らめた美鈴が叫ぶ。

「ね、子供じゃないでしょ? 前の孔もちゃんと使えるのよ……美鈴、もう大人だよ、お姉ちゃんより大人なんだから……」

 それでも、小さな身体に男根が辛いのだろう、少女は自らの手で性器を弄り、痛みを散らそうとしていた。肥大化したクリトリスに着いたピアスに指を掛け、クイ、クイッと引きながら、もう一方の手では蜜壺の中に指を入れ、陰唇をニチャニチャと掻き回して無理矢理甘い声を漏らす。

「どうだ、尻の穴もいいもんだろう?」

「う、うん……私ね、お尻大好き……挿入られると、息が……詰まりそうに、なる、んだけど……それが……好き……」

 朦朧とした美鈴は、自分が人間に向かって喋っていることに気づいていないようだ。明らかなルール違反だが、暖かな肛門に淫棒を沈めている香月は頬を蕩けさせたまま咎めない。片方の手でまだ平らな胸を揉み、もう片方の手は蜜壺に伸ばし、弄りながら身体を揺すり始める。

「あ、はぁうっ! う、あ、あああっ!」

 次々と生じる衝撃に、幼い身体が辛そうに暴れた。細い手足が虚しく宙を掻き、震える唇からは悲鳴のような声が漏れる。

「くぁあっ! ひ、ぅあンっ! あ、ああ、あふぁっ!」

 次第に声が甘くなってきた。苦痛に顰められていた眉根が、ふわ、ふわ、と弛む。

(あ……感じてるんだ……)

 淫靡な表情を見せる美鈴に、美雪は新鮮な驚きを覚えた。いつも哀しそうに弱々しく微笑んでいた妹が、倒錯的ではあるものの、蕩けるような悦びに身悶え、喘いでいる??驚くと同時に、胸がズキリと痛んだ。

(美鈴……可哀想……)

 心の内で呟き、自らの言葉に違和感を覚える。

(……どうして? 可哀想なのに……)

 急に鼓動が早くなった。哀れな声を上げて身悶える妹に、身体が同調し始めているのか、と思ったが、違うようだ。もっと根元的で単純な感情が、ジクジクと身体の奥底を冒している感覚がある。

「ひぁあ……み、見て、お姉ちゃん見てっ! 美鈴を見てぇっ!」

 狂ったように泣き叫ぶ少女。

 見て、と言われなくても、目が離せない。

 紅い粘膜を捲り上げながら、太い肉棒が妹の肛門を出入りしている。

 痛々しいはずの光景が、何故だか酷く??口惜しい。

 いつの間にか熱く蕩けていた肉壺が、ぐじゅり、ぐじゅりと蠕動する。熱い蜜が溢れてきた。M字に開いた脚の間に、トロリと流れ出てくる。

(ああ……どうして美鈴なの……どうして……)

 キュウッと胸が痛んだ。

 切ない気持ち。

(私も??私も……)

 淫らな欲求が不意に膨れあがる。

 美鈴という枷が外れた今、美雪には耐える理由がなくなっていた。玄蕃に犯されながら妹の前ではなんでもない素振りを見せなければならない二重生活から解放されたのだ。それならば逃げ出せばいいものを、ぐずぐずと留まっていたのは??。

(イヤ……仲間外れにしないで……私にも、して……)

 美鈴を助けられないか、というのは、口実に過ぎなかった。三年間の淫らな調教で、弄ばれる悦びに目覚めていたのだ。病弱な妹より、自分のほうが??心のどこかでそんな風に思っていた。自分のほうが、美鈴よりずっとずっと賢い仔になれる??姉妹の間にだけ生じる、強く暗いライバル心がふつふつと湧いてくる。

(私を使って??そしたら、分かるはず……お願い、抱いて小父様??)

 涙の味が変わっていた。

 妹に嫉妬し、男を強く求めている。

「ふう??よかったぞ、美鈴」

 ぐったりした少女から男根を引き抜いた香月は、壁際に放置された美雪を見て、唇の端をいやらしく歪めた。

「どうした、美雪? お前もして欲しいのか?」

 違う、と左右に振ろうとした首が、勝手に上下に動く。長い黒髪がおどろに乱れるほどに、激しく、激しく縦に振られる。

「甘やかすな、圭児。バカ犬にはおあずけで十分だ」

「ふん。それもそうか」

(い、いや……意地悪しないで……お願い、して……私にもしてよぉ……っ!)

 再び無視を決め込む男たちに、美雪は泣きながら駄々っ子のように身体を揺すった。

        *  *  *

 美雪は忘れているのだが??。

 同じような感情を、過去に抱いたことがある。

 美鈴が生まれたのは、美雪が小学校へ上がる前であった。未熟児だったせいか、妹は身体が弱く、這い這いをする前に何度も入退院を繰り返していた。それ故、両親の注意は美鈴にばかり向き、まだ幼かった美雪は辛い思いをしたのである。

(どうして私には構ってくれないの? どうして美鈴ばかり気をかけるの?)

 それまで独り占めしていた両親の愛情を、病弱な妹に奪われて、美雪は初めて嫉妬を覚えた。どうしたら両親の気を引けるかと、妹の玩具を取り上げたり、障子や襖に穴を開けたりした。それが叱られるだけで巧くいかないことを知ると、今度は美鈴を観察し、その行動様式を真似ることにした。

 床を這い、手に取った物をなんでも口に入れ、アーウーとしか喋らず、時々癇癪を起こして泣きじゃくる??小学校入学前に突然幼児退行してしまった美雪に親たちは驚き、あたふたとした。美雪にも関心を払うようになり、すぐに正常へ戻ったのだが、その時の記憶が胸の奥底に刻み込まれていた。

 状況こそ違え、いま目の前に展開している光景は、その時とよく似ている。

 美鈴ばかりが構われて、美雪は蚊帳の外に置かれている??肉悦を知ってしまった身体が疼くのと同時に、精神的外傷となっている「忘れられる恐怖」が、美雪の理性を打ち砕いてしまう。玄蕃を必死に美鈴から遠ざけ、自分の身を犠牲にしていたのも、裏返せば病弱な妹に新しい父親を奪われまいとする、無意識の行動であったかも知れない。

(私を見て??私を見てよ、お願い??)

 美鈴の痴態を目の当たりにした美雪は、胸を焦がす強い感情に突き動かされ、自ら堕落の道を選んだ。

(いい仔になるから??お願い、私を見て??)

 玄蕃の気を惹くためなら、どんなにイヤなことでも、耐え忍び、気に入られるよう努力したい??そんな決意をしてしまう。

「??いい顔になったな、美雪」

 早苗の中に精を注いだ玄蕃が、養女の雰囲気が変わったことに気づいて眩しそうに目を細めながら言った。途端に美雪は嬉しくなり、トロンと頬を弛ませる。

(いい仔でしょう? 美雪、いい仔でしょう?)

 猿轡を噛まされた口からタラタラと涎を垂らし、美雪は犬らしい表情で微笑んだ。

 

      エピローグ

 

 藤城玄蕃が品評会に出品した少女犬は、美犬の中にあっても一際目立つ存在であった。

 学校の制服らしい濃緑色のブレザーを着ている時は哀しげに微笑む線の細い美少女だが、玄蕃の命令によって裸になれば、先に金色のリングピアスを光らせた形よい乳房を突き出すようにして胸を張り、観衆の視線に羞じらいながらも輝くような笑みを見せる。

 綺麗に剃り上げられた恥丘にはやはりリングピアスがあり、ネームタグがぶら下がっていた。這ったりちんちんをしたりすると、それがキラキラと光って人目を惹く。金属板は薄く、手にすればほとんど重みを感じないだろうが、繊細な器官には負担であろう。幼さを残す顔立ちと未成熟なボディラインの中で、クリトリスだけが醜く肥大し、遠目からでもハッキリと確認できた。

 規定演技をこなしている間に、少女犬の顔はますます悦びの表情を増した。衆目を集め、命令されることに純粋な悦楽を感じているのだろう。整った顔を昂然と上げ、蕩けるような笑みを浮かべながら、キビキビと着実に芸を見せた。それでいて、仄かに羞恥の気配があり、時折見せる媚を含んだ目つきが艶めかしい。

 自由演技として披露したドッグフードの空中キャッチでは、長く艶やかな髪をたなびかせ、優美に舞い、伸びやかに踊った。女性らしさがまだ薄いほっそりした身体は、動きの中でこそ本来の美しさを発揮する。乳房が揺れ、ピアスが輝く。長い尻尾が綺麗に流れ、宙空に円を描く??五分間の演技時間が終了したあと、観衆は可憐な舞を見せた少女犬に惜しみない拍手を送った。

 この品評会の目玉は、出品された女犬を観衆自身が試す「試乗」である。百人近い客にそれぞれ一票の投票権があり、審査員のつけた点数に得票数が加算されるのだ。時間が限られているため、人気のある犬には客が殺到する。

 玄蕃の少女犬には二十人ほどの客が集まった。どこかあどけなさのある美少女犬は口や性器、肛門ばかりでなく、両手にそれぞれひとつずつの男根を握り、一度に五人もの男に奉仕した。どの部位も淫蕩に慣れた客たちにさえ「これは」と思わせる技術があり、何匹かを試した強者も感心の声を漏らした。黒髪に柔肌に、生臭い精液の飛沫を受けた少女犬は、さすがに疲労の色を浮かべながらも、肉欲の陶酔に頬を弛め、虚ろな目を法悦の涙に濡らして丁寧に礼を述べた。

 結局、その少女犬は豊満な牝犬たちを抑え、見事一位になった。褒美として逞しいドーベルマンに犯される少女の横で、ブリーダーの玄蕃がインタビューに応える。

「飼い始めた時はどうしようもないバカ犬で、まさかこんな栄誉を与えられることがあるとは思っていませんでした。名前? バカと呼んでいますが、本名はなんだったか??確か、ミスズだか、ミユキだか、あるいはミズキだったか??」

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