気が付くと、少女は炬燵に足を入れて寝転んでいました。今度はパジャマもパンティも脱ぎ捨てて、全裸になっていました。しかも、口にはゆで卵を1つくわえ、もう一つのゆで卵は、恥かしい穴の中に入れていました。
「あたしって、本当に淫乱・・・」
少女は、口と恥かしい穴からゆで卵を取り出し、泣きながらシャワーを浴びました。
新しいパンティをはき、新しいパジャマを着ると、少し気持ちが治まりました。
綿入りの半纏を羽織って炬燵に入ると、マッチ箱と燃えさしのマッチ棒が3本入った皿が、目の前にありました。迷いながらもマッチ箱を手にとって開けると、残りは1本でした。
しばらくためらっていましたが、少女は最後のマッチをシュッと擦りました。
またパァーと見ていられないほど明るくなって、徐々に光が弱まっていきました。今度は煌々と光るまん丸の光です。その光がだんだん遠ざかり小さくなっていくと、それは満月の月明かりでした。天窓の上に青白く光っています。天窓からあたりに目を移すと、少女は椅子とテーブルがいくつか並んだ通路にいました。少し奥にはカウンターと止まり木の椅子も見えます。カウンターの奥の棚にはコーヒーカップやコップがたくさん並んでいて、どうやらここは喫茶店のようです。
「あれっ、お嬢ちゃん。どこから入ってきたの?」
店のマスターらしいラブラドルレトリバーの顔をしたおじさんが、
「喫茶らぶらどる」と書かれた看板を抱えて入り口から入ってきました。
「あっ、ごめんなさい。すぐ出ていきますから」
少女は、拡げた股をマスターにまともにむけたまま、泣きそうな声でいいました。
「おい、おい、出て行けなんて誰も言っていないぜ。それにそんな素っ裸で外に出たら、ちょいとした騒ぎになっちまうぜ。それとも、どうしても急いで行かなきゃならないところでもあるのかい?」
少女は悲しげに首を横に振りました。恥かしくて仕方がないのに、また腰をくねくねとくねらせてしまいます。マスターは驚いたようでしたが、すぐ目を逸らせてくれました。
「ふうん、何か、訳がありそうだな。まあ、そこの椅子に座って少し休んでいきな」
「ありがとうございます。でもあたし、魔法をかけられているようで、この格好のままで歩いて進むことはできるんですけど、身体を起こすことなんかはできないんです」
「ほう、魔法でそんな風にされちゃったの。それは災難だね。分かった。ちょっと待ってな」
マスターは少女の脇を通り抜けて店の奥に行き、毛布を持って戻ってくると、それを少女の身体を覆うようにかけてくれました。
「とりあえず、こうしておかなきゃね。クッションをもってきて背中の下に置こうか?」
「どうもありがとうございます。でも、これで大丈夫です」
「そうかい。でも苦しくなったら遠慮なくいうんだよ。」
「はい、どうもありがとうございます」
「ゆっくり休んでいくといいよ。今、温かいミルクでも入れるから」
マスターはカウンターの中に入っていきました。
「すみません。ありがとうございます」
あまりにも優しくしてくれるので、少女はマスターに何もかも話してしまいたくなってきて、毛布を乗せたまま身体を回してマスターの方に向きを変えました。
「あのー、あたしの話を聞いてもらえますか」
「ああ、よかったら話してみて」
少女はマッチを拾ってから起きたことを、マスターに全部話して、
「……。だから、あたし本当に魔女なのかもしれないんです」
と、涙ぐんでいいました。
いをしたね。でも、お嬢ちゃんは魔女なんかじゃないよ」
「えっ、本当ですか」
少女の顔がパッと明るくなりました。
「そう、魔女じゃなくて、多分マゾなんだと思うよ」
「あっ、それじゃああたし、やっぱりマゾなんでしょうか」
少女は少し顔を曇らせました。
「なんだ。マゾじゃ、嫌なのかい」
少女はコクンとうなずきました。
「それじゃあお嬢ちゃんは、自分ではマゾじゃないと思っているのかい」
「いいえ、たぶん、マゾだと思います」
「どうして?」
「嫌らしくて恥かしいことを考えては、感じたり濡らしたりしてしまうからです。今夜もそうです。マッチを擦るたびにどんどん嫌らしくて恥ずかしいことがひどくなるのに、マッチを擦ってしまうし、淫らに濡らしてしまうんです」
「なるほど、それで気持ちよかったかい」
「は?」
「感じて濡らして、気持ちよくなれたのかね」
「いえ、すごく興奮はしたんですけど、気持ちいいとはあんまり感じませんでした」
「そりゃあ、ちょっと変じゃないかねえ。だって、感じたり濡れたりするのは気持ちいいからのはずだろう」
「はあ、そう、たしかにそうですよね。どうしてあたしは気持ちよくなれないんでしょう?」
「それはね、多分お嬢ちゃんが本当に求めているのは、恥かしくて嫌らしいことそのものではなくて、恥かしくて嫌らしい自分を受け入れてくれる人だからだと思うよ」
「はあ?」
「ちょっと分かりにくいか。それじゃあ、今仮にお嬢ちゃんに好きな人がいて、その人はお嬢ちゃんが恥かしくて嫌らしいことをせずにいられないということをよく知っているけど、それでもお嬢ちゃんが好きだと思ってくれるとするよ」
「はい」
「その人に『見せても大丈夫だよ』といわれて、その人の目の前で恥かしくて嫌らしいことをしたとしても、お嬢ちゃんはあんまり気持ちよくならないかな」
「あ、いいえ、とっても恥かしいけれど、多分嬉しくて気持ちよくなると思います」
少女は、顔を赤らめながら答えました。
「そうだろう。だからお嬢ちゃんが本当に求めているのは、恥かしくて嫌らしいことをするお嬢ちゃんを受け入れて愛してくれる人なんじゃないかな」
「…」
少女は、頭の中に固く張りつめていた氷が、急激に解けていくように感じていました。
「分かりました。そうです。あたし、そういう人が欲しかったんです。あのう、それでマスターに一つお願いがあるんですが」
「ほう、なんだね」
「毛布を取って、あたしの恥かしいところを見て欲しいんです。マスターに見られるのはとっても恥かしいんですけど、でも見て欲しくてたまらなくなってきたんです」
「ほう、そうかい。それは光栄だな。俺でよければ見せてもらうよ」
マスターはカウンターから出て、少女の足の前に胡坐をかいて座りました。
「じゃあ、毛布をとるよ。いいかい?」
「はい」
マスターは静かに毛布を、少女の身体から外しました。
「うーん、とてもきれいで可愛いよ」
「あ、あぁ、とっても恥かしいです。でも、とっても嬉しいです。あ、あぁ…」
少女の腰がくねくねと動き始め、だんだん大きく悩ましく、くねるようになってきました。
「あ、あぁ、……、あ、あ、あぁ、……、あ、あぁ、あ、あ、あ、あん、いっちゃあうー」
少女の恥かしい穴から白い汁があふれ出てきました。
「あ、あ、あ、あぁ、あ、あぁーん、は、はぁ、はぁ、はぁ」
少女は完全に絶頂に達して、やがてそれを通り越して身体中の力が抜けたように感じていました。
「どうだい、お嬢ちゃん。気持ちよかったかい?」
「はい、すっごく、すっごく、気持ちよかったです」
「そりゃあ、よかった。あれっ、お嬢ちゃん。魔法が解けたんじゃないかい。床に腰を下ろしているよ」
「えっ、本当ですか」
本当でした。少し試してみると、肘から上も膝から上も思い通りに動かせました。
「わぁ、よかった。嬉しい。とっても、嬉しい」
「やったね。さあ、これで拭いてカウンターにおいで。温かいミルクを入れるよ」
マスターはティッシュの箱を渡して、カウンターの中に戻りました。
少女はティッシュで後始末をして、毛布を羽織ってカウンターの止まり木に座りました。
「じゃあ、魔法が解けたことに乾杯だ」
マスターはコーヒーの入った自分のカップを、少女が手に持ったミルクのカップにコツンと当てました。カップを持ち上げてから、少女は一口ミルクを飲みました。
「ああ、すごくおいしいです。どうもありがとうございました。全部、マスターのおかげです。本当になんといってお礼をいったらいいか、分かりません」
「いや、魔法を解いたのはお嬢ちゃんだよ。もっとも、多分魔法をかけたのもお嬢ちゃんだろうけどね」
「えっ、それじゃあ、あたしやっぱり魔女なんでしょうか」
「あはは、お嬢ちゃんが魔女だっていっているんじゃないよ。お嬢ちゃんが自分のことをマゾだと思っていながら、マゾであることを嫌がっていたから、お嬢ちゃんの心の中にあるマゾが、自分もお嬢ちゃんの一部だってことを認めて欲しいって、反乱を起こしたんじゃないかなといっているんだよ。マッチをするたびにどんどん酷いことになっていったのは、お嬢ちゃんの中のマゾが『私のことも認めて』っていうメッセージじゃないかな。だから、俺に自分がマゾだってところを見せたら、身体が動くようになった気がするよ」
「その通りかもしれません。あたしもう、自分がマゾだってこと嫌じゃありません」
「だったら多分もう、さっきみたいな魔法にかかったりはしないから心配ないよ」
「あたしもそんな気がします。本当におかげさまで救われました。それで、あのう…」
少女は顔を赤らめて、もじもじしていました。
「どうした。何でも遠慮なくいったらいいよ」
「はい、あの、あたしがこれからマゾとして生きていくためには、恥かしくて嫌らしいことをして感じてしまうあたしを受け入れて下さる人が必要ですよね」
「うん、そうだね」
「あのう、マスターがその人になっていただけないでしょうか」
少女は真剣なまなざしでマスターをみつめました。
「そりゃあ、とても光栄だけど、俺にはそれはちょっと無理だね」
「えーっ、どうしてですか」
「お嬢ちゃん。俺はお嬢ちゃんがマッチを擦ったから出てきたんだってことを、忘れちゃいないだろう。だから俺は、お嬢ちゃんが擦ったマッチが燃え尽きれば消えてしまうのさ」
「嫌です。消えないでください。お願いです」
少女は何度も頭を下げて頼み込みました。
「お嬢ちゃん、歳はいくつ?」
「18です」
「若いなあ。それじゃあ、青春もまだほんの序の口じゃないか。大丈夫、自分に素直になって一生懸命生きていれば、必ずお嬢ちゃんが求めている人が見つかるよ」
「……」
少女は、しょんぼりとうなだれていました。
「元気を出しなよ、お嬢ちゃん。ほら、天窓を見てごらん」
少女は振り返って、天窓を見上げました。
「天窓の向こうにお月さんが見えるだろ」
「はい」
「マッチの中の世界じゃなくてもお月さんは見えるよね」
「はい」
「俺はこんな素敵なクリスマスイブにしてくれたお嬢ちゃんのことを忘れないよ。あの天窓のお月さんを見上げるたびに、お嬢ちゃんを思い出してがんばれって応援するよ。だから、お嬢ちゃんもお月さんを見たら、俺とこの喫茶店を思い出してくれたら嬉しいな」
「はい」
少女は深くうなずきました。
とたんに真っ暗闇になって、何も見えなくなりました。